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ヤクルトの秘密。
~小川監督が受け継ぐ系譜とは?~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2011/11/10 06:00

ヤクルトの秘密。~小川監督が受け継ぐ系譜とは?~<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

シーズン終盤には主力選手の離脱が相次ぎ、中日に逆転優勝を許したが、正式就任初年度でチームを2位まで引き上げた小川淳司監督

 今年のヤクルトは興味深いチームだった。日本シリーズには行けなかったが、クライマックスシリーズでは中日からも2勝を挙げた。負けた試合も2試合は1点差だったから、よく戦ったと言っていいだろう。

 レギュラーシーズンの総得点が484点、総失点が504点。得失点差はマイナス18点だが、それでもチームは70勝59敗15分、貯金11だった。得失点差がマイナスでAクラスに入ったチームは、最近10年間で9チーム目。得失点差マイナスで2位というのは3チーム目になる。

 失点の方が多くても勝ち越しているのは、勝つ時は接戦が多く、負ける時は大差で負けることが多いことを意味している。これはだいたいにおいて、戦力はそれほどそろっていないチームが、うまくマネージメントされた結果である。つまり、小川淳司監督がいい仕事をしなければ、こういう結果にはならなかっただろう、ということだ。

基礎的なデータを見ると、貯金11のチームには見えないが……。

 今年のヤクルトの基礎的なチームデータを見ると、チーム打率は「.244」でセ・リーグ3位。チーム本塁打はウラディミール・バレンティンの加入もあって85本で2位と伸びたが、チーム盗塁は43個で5位。そしてチーム防御率も3.36で5位である。これだけ見れば、貯金11のチームには見えない。

 それでも、さらに詳しく見ていくと、今年のヤクルトがチームとしてよく機能したことが理解できる。例えば、打撃成績を巨人と比較してみると次のようになる。チーム打率はヤクルト「.244」、巨人「.243」でほとんど差はないが、ヤクルト85本塁打に対して巨人は108本塁打、ヤクルト43盗塁に対して巨人106盗塁と、長打力、走力ともに巨人がヤクルトを凌いでいる。

●得失点差がマイナスで2位になったチーム(最近10年)
球団
監督
総得点 総失点 得失差 チーム
打率
チーム
本塁打
チーム
盗塁
チーム
防御率
平均年俸
'11 ヤクルト
小川淳司
70 59 15 484 504 -18 .244 (3) 85 (2) 43 (5) 3.36 (5) 3430万 (5)
'09 楽天
野村克也
77 66 1 598 609 -11 .267 (3) 108 (6) 103 (4) 4.01 (4) 2684万 (6)
'04 ヤクルト
若松勉
72 64 2 618 691 -73 .275 (3) 181 (4) 42 (5) 4.70 (5) 3272万 (5)
※( )内の数字はリーグ内での順位

 しかし、取った得点はヤクルトの方が多い。ヤクルトは484得点、巨人は471得点だ。巨人の方が23本も多く本塁打を打ち、63個も多く盗塁しているにもかかわらず、ヤクルトの得点が多いのである。これは、ヤクルトがいかに効率よく得点したかということだ。巨人が1点を取るために平均2.43本のヒットを必要としたのに対し、ヤクルトは2.34本だった。効率よく得点できたのは「ここで1本」という場面でよく適時打が出ていただけでなく、チャンスを広げる段階で、四球を選ぶ能力が高かったことも見逃すわけにはいかない。

【次ページ】 今年のヤクルトが備えていた「本物の選球眼」。

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