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<私と旅ラン> 国井律子 「バイクで通り過ぎた景色を取り戻す」
text by
NumberDo編集部Number Do
photograph byRitsuko Kunii
posted2011/10/27 06:01
100人いれば、100通りのカタチがそこにはある。
走りながら景色を眺めるのも、仲間との時間を楽しむのも、
もちろん美味しい食べ物に舌鼓を打つのもよし。
今回はエッセイスト・国井律子さんの
「旅+ランニング」を特別に教えてもらいました。
ウェブでは、雑誌未収録の部分も盛り込んだ特別版をお届けします。
禁煙を始めたら1カ月で7kgも太っちゃって。まずいなぁと思って、加圧トレーニングを始めたんです。トレーニング後は溜まった老廃物を有酸素運動でリンパに流さなくてはいけなくて、水泳、マシン、ラン、3つ試して一番ストンと痩せたのがランだった。これが走りはじめたきっかけです。
ただせっかく頑張ってトレーニングしてもツーリングに行くと、旅先でおいしいものばっかり食べて太っちゃう。それにバイクって足腰が弱るんですよ。どうしよう、と思った時に気付いたのがランでした。
最初に走ったのは北米。特にカナダはきれいな湖とか、すごくいいところがたくさんありました。そんな風光明媚な場所なのに、誰も人がいない。静かすぎて“熊とか出ないよね”って怖くなるくらい。でもそういう場所に滝までの木道とか、ちゃんとトレイルランに適したコースがあるんですよ。写真を撮るために立ち止まったりしながら、1時間くらいゆっくりジョグして、最後に酒屋に寄ってお酒を買って帰る。そうやって散策がてら、ほとんど毎日走ってましたね。
バイクとランだと、同じ道でも感じ方が全然違うんです。
バイクって景色を全部すっとばして次の目的地に行っちゃうんです。時速100kmくらいで国道を走ってると、あまりにめまぐるしくて、景色が入ってこない。ず~っと針葉樹林、ず~っと山道みたいに、同じような景色に見えるから飽きるし、だからといって荷物があるから立ち止まるのも億劫で。だけどランだと緑の匂いを感じたり、土がふかふかしてて気持ちいいな~とか、見つけた小道を曲がったら不思議な光景があったり。同じ道なんだけど、感じ方が全然違うんです。