7月13日。アスレティック・ビルバオの新監督に就任したマルセロ・ビエルサは、独特の言い回しで自身のプレー哲学を説明した。
「相手に合わせるのではなく、ボール支配によってゲームの主導権を握ること。自陣より敵陣で長くプレーすること。ボールは奪うのではなく、可能な限り保持すること。ルールは利益を得るためではなく、プレーを向上させるために利用すること。そして可能な限り各ラインで相手に先んじ、ゲームを構築していくこと」
数日前に行なわれた会長選挙の結果、4シーズンにわたりチームを率いたカパロス前監督はマクア前会長と共にクラブを去った。
コパ・デル・レイ決勝進出、ヨーロッパリーグ出場権獲得といった前任者が収めた成功をなぞると同時に、チームのプレースタイルを一変させる。そんな難しい課題に立ち向かうべく、ビエルサは多数のオファーを断りビルバオと契約したのだった。
超攻撃的戦術を愛するビエルサ。必要な人材が揃っていたビルバオ。
ビルバオは元来、バスク人特有のフィジカルの強さを生かした「蹴って、競って、走る」英国風のダイレクトプレーを伝統のスタイルとしてきた。一方、ビエルサが目指すのは最終ラインからショートパスを丁寧につないでボールを支配し、何人もの選手が連動して動きながら縦のスペースを大胆に突いていくアグレッシブな攻撃サッカーだ。
「走る」という部分を除き、両者は一見、対照的なもののように感じられる。だが、実はビルバオにはビエルサが求める人材が揃っている。
強靭なポストプレーヤーのジョレンテ、そしてムニアイン、スサエタ、ガビロンドらスピードとテクニックを兼ね備えたウイング達は、3-4-3の使い手として知られる指揮官が好む3トップを構成するのに最適なアタッカーばかりだ。
さらに中盤の底にはフル代表でも同ポジションを務めるハビ・マルティネスが、ビルドアップの起点となる最終ラインにはバルセロナも興味を抱くパス能力に優れたセンターバック、サン・ホセがいる。U-21代表の逸材アンデル・エレーラの補強により、数年来の懸念だったゲームメーカーの不在も解消された。
人材は揃っている。となればあとは、彼らにビエルサ流を浸透させるのみだ。「ロコ(変人)」のあだ名を持ち、サッカー界きっての戦術マニアと言われる彼の描くサッカーを具現化するのは簡単な作業ではないが、それは時間が解決してくれる。地元メディアやファンが期待に胸を膨らませたビルバオの新シーズンは、しかし想像以上に厳しい戦いを強いられることになった。
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