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好調ヤクルトを率いる
小川監督の人心掌握術。
~現役選手、コーチが証言する~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/07/26 06:00

荒木コーチ(左)とともにナインを迎える小川監督(中央)。13日現在、首位を守っている

荒木コーチ(左)とともにナインを迎える小川監督(中央)。13日現在、首位を守っている

 今年の春の沖縄キャンプでの夜のことだった。ヤクルトのある中堅選手と焼肉屋で一緒になった。

「小川淳司監督って、すごいですよ。年長のうるさ型コーチを受け入れ、次期監督候補をチーフコーチとして容認するんですから、気持ちが大きいというか、この人と一緒にやろうという気になります」。

 こう言って、小川の人柄を評価した。

 監督となれば、自分より年長のコーチの存在を煙たく思うものである。だが、小川監督は自分よりも13歳も年上の伊勢孝夫総合コーチを、ヤクルトに復帰させた。伊勢は「監督が仕事の場を与えてくれるから」と意気揚々と選手に対峙している。

 2番の田中浩康、6番の宮本慎也には“繋ぎのバッティング”を、4番の畠山和洋、バレンティンには“カウント別配球”を指導。「この年齢で欲などない。自分の持っているものを全部伝えたい」という気持ちで、野村克也時代の“プロ野球”を伝授している。

“勝てば選手のおかげ、負ければ監督の責任”に徹する小川監督。

 ヤクルトでは今季の布陣について、監督代行の小川が昇格するのか、荒木大輔投手コーチが規定路線通りに昇格するのか揉めたことがあった。球団は、借金19を完済した実績を買って小川を監督に昇格させ、荒木をチーフに据えている。一時はユニフォームを脱ぐと言った荒木にも小川が協力を要請。チーフの肩書きを与えたのも小川自身だったと言われている。

 石川雅規、館山昌平、村中恭兵、由規と、'10年に二桁勝利を挙げた4人に加え、増渕竜義の成長もあり、投手陣は万全と言われていた。だが村中、由規が故障、増渕が不安定となった時、荒木は代わりの先発投手を必死に探した。その中から山本斉、七條祐樹がプロ初勝利を挙げ、投手陣崩壊を防いだ。“キチンと仕事をしないと後がない”という思いが荒木にもあったのだ。

 ヤクルトには昔から家族的な温かさがあり“みんなで繋ごう”という野球が身上だった。17年目のベテラン宮本が言う。

「昔を知る小川さんと一緒に、強かった時代を取り戻したいという気持ちです」

 懐の深さを感じさせる小川采配だからこそ今、繋ぐ野球が復活している。由規、村中が戻ってくる夏場、しかも“勝てば選手のおかげ、負ければ監督の責任”に徹する小川監督の下で気分よく戦う選手たちが、簡単に失速するとは思えない。

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