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特別編「アマチュア野球観戦記(1)」 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2004/05/07 00:00

特別編「アマチュア野球観戦記(1)」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 3月8日から5月3日までの約2カ月間、72試合のアマチュア野球観戦の中で心惹かれた有力選手を今回は紹介する。社会人のスポニチ大会では、新日本石油=手嶌智(投手)、坂下真太(左翼手)、三菱ふそう川崎=五嶋貴幸(投手)、渡辺直人(遊撃手)、日産自動車=三橋直樹(投手)、東京ガス=片岡易之(二塁手)、シダックス=野間口貴彦(投手)、大阪ガス=能見篤史(投手)、小倉飛鳥(二塁手)、長瀧雄太郎(指名代打・内野手)、日本新薬=村田智徳(投手)に注目した。

 野間口、手嶌のように昨年初めから評判になっていた選手もいるが、他の選手は昨年夏、あるいは今年春から頭角を現した選手ばかりだ。チーム数の減少で地盤沈下が憂慮される社会人野球。しかし、無名の高校卒、大学卒選手をドラフト候補にのし上げる育成力は健在で、頭が下がる思いがする。五嶋、三橋の投手組、渡辺、片岡、小倉の野手組は高校、大学時代を無名で過ごし、社会人で花開いた選手。そして、プロ野球界にも、社会人の育成手腕によって蘇生した選手は少なくない。

◇投手……水田章雄(ダイエー)、森慎二、三井浩二、後藤光貴(西武)、清水直行、小林雅英、渡辺俊介、黒木知宏(ロッテ)、建山義紀(日本ハム)、山口和男(オリックス)、安藤優也(阪神)、岩瀬仁紀(中日)、高橋尚成(巨人)、佐々岡真司、高橋建(広島)、加藤武治、川村丈夫(横浜)

◇野手……松中信彦(ダイエー)、和田一浩(西武)、礒部公一(近鉄)、小坂誠(ロッテ)、小笠原道大、坪井智哉(日本ハム)、谷佳知(オリックス)、赤星憲広、藤本敦士(阪神)、大西崇之(中日)、古田敦也、宮本慎也(ヤクルト)、金城龍彦(横浜)

 もし日本の野球界に社会人野球がなければ、彼らの野球人生は高校、あるいは大学卒業の時点で途絶えてしまったかもしれない。そのように考えると、社会人野球がいかにプロ野球界に貢献してきたか理解できる。ちなみに、'93年の都市対抗にNTT関東の補強選手として出場した松中は、ガイドブックに利き腕が「右投左打」として紹介されている(現在は左投左打)。深刻な左肩の故障で一時期、右投げを余儀なくされていたのである。そういう肉体的なハンディを乗り越える環境も、社会人野球には整っている。

 センバツ大会ならびに春季大会で目についた高校生を次に紹介する。

◇投手……佐藤剛士(秋田商)、木村正太(一関一高)、ダルビッシュ有、真壁賢守(東北高)、中山博之(明星高)、上野大樹(帝京高)、斉藤勝(修徳高2年)、川上國嘉(東京学館浦安高)、涌井秀章(横浜高)、山室公志郎(桐光学園2年)、三田智仁(湘南学院)、岩田慎司(東邦高)、岩田雄大(大阪桐蔭高)、片山博視(報徳学園2年)、大前佑輔(社高2年)

◇野手……山縣有輔(早稲田実・捕手)、中野大地(拓大紅陵高・捕手)、上田真幸(福井高・三塁手)、平田良介(大阪桐蔭高2年・中堅手)、生島大輔(大阪桐蔭高・遊撃手)、宮田良祐(社高2年・遊撃手)、上本博紀(広陵高・捕手)、鵜久森淳志(済美高・左翼手)、高橋勇丞(済美高・右翼手)、柴田講平(福岡工大城東高・中堅手)、今村満大(佐賀商・捕手)、舛巴義明(日南学園・右翼手)、田中庸介(日南学園・一塁手)

 プロ野球界に目を転じると、高校からプロ入りした選手は苦戦を余儀なくされている。「大学に行ったつもりで4年間はプロの体力をつけ、勝負は5年目以降」というモラトリアム(猶予期間)的思考が成長の障害になっていたのだが、メジャー組のイチロー、松井秀喜、松井稼頭央、石井一久を見てもわかるように、トップクラスに名を連ねているのは高校卒選手が多い。さらにここ数年、投手なら寺原隼人(ダイエー)、岩隈久志、阿部健太(近鉄)、正田樹(日本ハム)、朝倉健太(中日)、林昌範、真田裕貴(巨人)、高井雄平(ヤクルト)、大竹寛(広島)、野手なら川崎宗則(ダイエー)、中島裕之(西武)、内川聖一(横浜)に代表されるように、高校卒選手の早い飛び出しが目につく。松坂大輔(西武)のような“20年に1人”の逸材ならいざ知らず、従来なら5〜6年の猶予期間を設けられる選手が、5年以内に一軍の戦力になっているのだ。選手とともにプロ指導者の意識が変わりつつある現在、高校卒選手の可能性はさらに広がっていると思って間違いない。

 大学生で注目したのは次の選手たちだ。投手=一場靖弘(明大)、那須野巧(日大)、山岸穣(青山学院大)、伊藤義弘(国学院大)、中田賢一(北九州市立大)、野手=田中浩康(早大・二塁手)、秋山典克(早大・右翼手)、西谷尚徳(明大・二塁手)、倉持典幸(明大・中堅手)、清水信任(亜大・中堅手)、松田宣浩(亜大3年・三塁手)、亀井義行(中大・右翼手)、大松尚逸(東海大・中堅手)、黒木豪(日本体育大1年・指名代打)。

 首都圏に固まっているのは、今年になってから僕がそれ以外の地域に遠出していないからだ。また、大廣翔治(東洋大・三塁手)、越智大祐(早大3年・投手)は調子落ちのため敢えて名前を外しただけで、逸材であることに代わりはない。

 プロに目を転じれば、今や大学卒選手は中心的集団を形成している。

◇投手……和田毅、新垣渚(ダイエー)、豊田清(西武)、福原忍(阪神)、川上憲伸(中日)、上原浩治、木佐貫洋、久保裕也(巨人)、石川雅規(ヤクルト)、黒田博樹、永川勝浩(広島)、佐々木主浩(横浜)

◇野手……井口資仁、柴原洋(ダイエー)、矢野輝弘、今岡誠、金本知憲(阪神)、井端弘和(中日)、阿部慎之助、小久保裕紀、二岡智宏、清水隆行、高橋由伸(巨人)、村田修一(横浜)

 とくに目立つのは、上位球団ほど大学卒選手が幅を利かせていること。ドラフトに逆指名、自由競争を導入したことで、資金力と順位がイコールになってしまったプロ野球の事情が、大学卒選手の顔ぶれを見るとわかってしまうのである。

 シーズンはまだ始まったばかり。これからは遠出をする予定なので、西日本のドラフト候補にも光を当てたレポートを書いていくつもりである。プロ野球とアマチュア野球の「距離を隔てないレポート」も、今回同様、これからも続けていくつもりなので、楽しみにしていただきたい。

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