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セリエAの名門ローマの危機。
~買収騒動とサポーターの愛~ 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byUniphoto Press

posted2009/08/22 08:00

セリエAの名門ローマの危機。~買収騒動とサポーターの愛~<Number Web> photograph by Uniphoto Press

王子トッティはローマで選手生活を終えるつもりだろうか

 相次ぐクラブ買収工作騒動の鎮静化を図るため、ASローマの女性会長ロセッラ・センシは今月10日に緊急会見を開いた。同会長は「真にローマを愛する者からの交渉でなければ応じない」と感情論を持ち出し、変革への門戸を閉ざした。センシ会長一族と大手銀行グループ「UniCredit」との持ち株会社「Italpetroli」によって経営されるローマは、世界金融恐慌の煽りを受け深刻な財政難に陥っている。今夏にはスイス、ロシアの投資家による一連の買収工作が表面化し、「永遠の都」を名にいただくクラブの凋落を大きく印象づけている。

 ローマは買収ターゲットとしてさぞ魅力的だろう。歴史と伝統を重んじるヨーロッパ文明社会にあって、その源とされる都市「ローマ」のネームバリューは絶大なものがある。昨季のチャンピオンズリーグ決勝戦開催もそのイメージをうまく利用し、成功を収めた。クラブは経営難に加え、戦績低迷傾向にあり、投資家にとっては絶好の買い時だと映るはずだ。最後のスクデット獲得から10年近くが過ぎた今のローマを表すには「ジリ貧」という言葉が適切かと思う。

“ゼロトップ・システム”ゆえの故障者増加が響く。

 クラブのシンボルであるFWトッティは「今年は得点王を狙いたい」と気丈なところを見せているが、9月には33歳になる。選手生活の晩年が見えてきた彼は、クラブの金銭負担を考慮し、2014年までの契約延長を得る代わりに年俸の15%減額を受け入れた。次期主将と目される生え抜きのMFデ・ロッシは「北のビッグ3との差は開いてしまった。俺たちは第3集団だ」と、スクデットを狙えるチームではないことを認めている。

 近年、欧州を席巻するかに見えたスパレッティ監督の「ゼロトップ・システム」は、運動量を必要とするスタイルゆえに過大な肉体的負担を選手に強いた。そのため攻撃的なポジションの選手に故障者が続出し、継続した運用が困難という弱点を露呈した。そのうえクラブの消極的な戦力補強方針やコンディション管理体制の不備もあって、チームパフォーマンスの安定感不足はつねについてまわった。

ついに守備陣も崩壊し、補強さえままならぬ苦境に。

 マンネリ傾向とモチベーション低下が散見された昨季は、ついに守備も崩壊。セリエA順位は6位だったが、リーグワースト4位にあたる61失点を記録した。この数字は最少失点で優勝したインテルの倍近い。今夏、主力MFアクイラーニの売却を余儀なくされ、補強も無名選手の獲得のみにとどまった。選手が縦横無尽に連動する攻撃スタイルは変わらないが、そのスケールは著しく縮小した。もはや欧州の一線級チームにとって、ローマとの対戦は恐れるものではなくなった。

<次ページに続く>

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