なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
実は失速の可能性もあったなでしこ。
前W杯王者のドイツ代表撃破の裏側。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2011/07/12 10:30
丸山桂里奈(まるやま・かりな)の歴史的ゴールシーン。ドイツ戦の直前には、東日本大震災のビデオを見て気持ちを奮い立たせた
なでしこジャパンが快挙をなしとげた。
単にベスト4入りというだけではなく、延長の末に0-1で開催国ドイツを破ってのベスト4入りだ。ドイツといえばW杯2連覇中で、1999年からワールドカップでの敗戦がなく、日本も1995年以来8戦して一度も勝ったことがない相手。何よりも'08年の北京五輪では3位決定戦で敗れ、メダル獲得を阻まれた宿敵でもある。
1993年から代表でプレーし続ける澤穂希でさえ「正直びっくりした」と言う、歴史的快挙なのだ。
ただ、ドイツ戦の勝利に驚かされたのはなにも過去の実績の差だけが理由というわけでもない。
相手がどうこうと議論する前に、グループリーグの3戦ではなでしこ自体の戦いぶりのまずさがいつになく目立っていたからだ。
イングランドに「なでしこサッカー」を披露することなく惨敗。
なんといってもグループリーグ最終戦のイングランド戦。
2連勝で既に突破を決めていた日本と、この試合の結果に決勝トーナメント進出をかけるイングランドでは試合の入り方が違った。
なでしこは立ち上がりからイングランドに押され続け、前半と後半のそれぞれ早い時間帯に得点を決められてしまい、結局最後まで流れを自分たちのものにすることが出来ずに試合を終えている。相手に速いプレッシャーをかけられ、焦るようにボールを前線に蹴りだすばかり。フォワードにいったんボールをおさめた上で、人数をかけた攻撃をしかけようとしても前線に収まることなく相手ボールになってしまうことの繰り返しだった。パワーに対して、スピードとパスワークで崩す「なでしこサッカー」を見せることが出来ず苦しんだ。
対照的にイングランドは、マイボールになっても慌てることなく最終ラインからゆっくりとボールを保持し、おびき出したところでタテにボールを入れてくる。
「プラン通り」とイングランドのパウエル監督が振り返るサッカーの前に完敗を喫した。