MLB Column from USABACK NUMBER

金満ヤンキース トレード戦線での圧勝 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2006/08/03 00:00

金満ヤンキース トレード戦線での圧勝<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 7月31日午後4時、ウェーバーを要しないトレードの期限が締め切られた。今季も、締め切り直前に「駆け込み」トレードが多数成立したが、プレーオフ進出に向け、戦力増強にもっとも成功したチームはヤンキースだった。

 7月30日にフィリーズからボビー・アブレイユー右翼手と、コリー・ライドル投手を獲得すると、翌31日には、パイレーツからクレイグ・ウィルソン外野手/一塁手を獲得したが、この二つのトレードで交換要員として手放したのは、無名マイナーリーガー4人と今季絶不調で解雇目前だったショーン・チャコン投手の5人、現有戦力を温存したまま、即戦力3選手を獲得したのだから、「満点のでき」と言ってよいだろう。

 以下に、今回の補強がどれだけ戦力向上に役立ったかをご理解いただくために、トレード前後のヤンキースの戦力変化を、7月31日時点の「勝利貢献度(Win Share)」で示した(データは、野球シンクタンクの「ハードボール・タイムズ」によった)。勝利貢献度は、個々の選手の「総合力」を表す指標だが、3ポイントがチームの勝ち星一つに相当する仕組みになっている。投手も打者も同じ「土俵」で評価できるということが利点の一つだが、例を上げると、メジャー1位はアルバート・プホルスの26ポイント、2位はカルロス・ベルトランの23ポイントとなる。ここでは、アブレイユーはバーニー・ウィリアムズ、ウィルソンはアンディ・フィリップス、ライドルはチャコンの「代役」になるものとして、トレード前後の戦力を比較した。

<ヤンキース新旧戦力の「勝利貢献度」>

アブレイユー18ウィリアムズ5
ウィルソン7フィリップス0
ライドル5チャコン0
305

 というわけで、ヤンキースは今回のトレードで勝利貢献度が「25」ポイント増加した計算となる。ちなみに、上記の数字は、ここまでシーズンが4ヶ月終了した時点までの積算データだから、残り2ヶ月ではその半分の「12.5」ポイント(勝ち星換算では「4.2」勝分)、戦力が向上した勘定である。

 一方、ライバルのレッドソックスだが、アストロズのエース、ロイ・オズワルド獲得をめざしたが失敗、補強らしい補強ができないままに終わってしまった(オズワルド獲得に失敗したあと、同じくアストロズのロジャー・クレメンス獲得に動いたが、これも失敗した)。しかも、トレード戦線でヤンキースに完敗しただけでなく、30日には5番打者のトロット・ニクソン右翼手(勝利貢献度10)、31日には主将のジェイソン・バリテク捕手(勝利貢献度8)を負傷で失い、トレード期限の締め切りが過ぎてみたら、戦力が大幅に弱体化していたのだから、「泣きっ面に蜂」と言ってよいだろう。

 レッドソックスは、7月31日時点でヤンキースを1ゲーム差でリードしていたが、今後、仮にニクソンとバリテクの穴を完全に埋めたとしても、紙の上での計算では、「4.2」勝分の戦力を上積みしたヤンキースに、やがて追い抜かれる宿命が待っているのである。

 ところで、アブレイユーについては、レッドソックスも獲得に動いたのだが、戦力的にはヤンキースを上回る交換要員を呈示したものの、フィリーズから、アブレイユーの契約残り期間の年俸を全額負担するよう要求され、「高すぎる」と断ったのだった。2007年のシーズンも含めたアブレイユーの年俸残高は 2148万ドル、一人だけでマーリンズの今季年俸総額(約1500万ドル)をはるかに上回るのだが、「金満」ヤンキースにとっては痛くもかゆくもない額だったからこそ、成立したトレードだったのである。

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