MLB Column from USABACK NUMBER

薬剤スキャンダルの新展開と「ジアンビ効果」 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2005/01/19 00:00

薬剤スキャンダルの新展開と「ジアンビ効果」<Number Web> photograph by AFLO

 薬剤スキャンダルで揺れるメジャーリーグ、1月13日に機構と選手組合との間でドーピング規制に関する新合意が成立した。02年の労使交渉の際に合意された現行規定は、検査は「抜き打ち」とはいっても「シーズン中1回だけ」とわかっていたので、ひとたび検査を受けたら後はばれる心配をせずにステロイドを使うことができるなど、「規制」とはいっても抜け穴だらけのものだった。実際、昨シーズンも、シーズン後半に突然成績がよくなる選手が続出、「検査後の使用」が噂された。

 しかし、昨年12月、栄養サプリメント会社「バルコ」から非合法薬剤を供与したとされる疑惑で02年に大陪審に証人喚問されたジェイソン・ジアンビ、バリー・ボンズ等が、ステロイド使用を認める証言をしていたことが暴露され、メジャーリーグ薬剤規制の「ザル法」ぶりが、改めて厳しく批判された。批判の高まりに、ずっと「抜き打ち検査はプライバシーの侵害」という頑なな姿勢を貫いてきた選手組合も折れ、今回の薬剤規制見直しとなったのだが、組合が抜き打ち検査に非協力的な姿勢を変えた最大の理由は、薬剤を使用していない大多数の選手たちが「使用選手をかばう必要などない」と、方針の変更を強く要求したからだった。

 新規定では「シーズンオフも含め、回数無制限の抜き打ち検査」となったので、「ばれる」危険を冒さなければ薬剤が使用できなくなった。大陪審での証言が暴露された後、ジアンビがメディアから袋叩きの目にあっただけに、「ジアンビ効果」で薬剤使用を差し控える選手が増えると期待されている。

 では、薬剤使用が減ると、メジャーの野球はどう変わるのだろうか? 「ホームラン数が減る」ことは容易に想像できるが、実は、ステロイドの効果は「打球の飛距離が伸びる」ことだけにとどまらない。あまり知られていないが、打者にとって真っ先に現れるステロイドの御利益は「(動体)視力の改善」と言われているし、陸上の短距離記録の劇的短縮でも明らかなように走力も向上するから内野安打の数も増える。ステロイドは、打球の飛距離だけではなく、打率の向上にも寄与しうるのである。さらに、打者だけでなく、投手にとっても、球速が数マイル増加する上、筋肉の回復が早くなるので登板間隔を短縮できると言われている。最近、特段に成績が向上した一部のリリーフ投手に、強い疑惑の目が向けられてきた所以である。

  「ジアンビ効果」のもとで、05年のメジャーの野球がどう変わるのか、今から議論の的となっているのである。

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