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ビッグマンの頂点へ――ヤオ・ミン。 

text by

小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

PROFILE

photograph byNBAE/gettyimages/AFLO

posted2005/03/31 00:00

 ヤオ・ミンの自伝“Yao : A Life in Two Worlds”に興味深い話があった。

長い間、ヤオの両親は息子がバスケットボール選手になることに反対していたという。当時の中国では、一流選手といえども収入は少なく、引退後に配属される仕事で苦労することも多かった。バスケット選手であった両親はそのことをよく知っていたので、子どもには大学受験の道を進んでほしかったのだ。また、180センチ足らずだった10代の初め、ヤオは中国の高名なコーチにこう断言された。絶対に良い選手にはなれないよ、と。そのコーチは優れた選手の見本として、当時の中国で最も注目されていたワン・ジジ(現マイアミ・ヒート)の名を挙げたという。

 今から考えると、想像もできないような話である。

 1980年生まれのヤオは、中国リーグでMVP、得点王、リバウンド王、ブロックショット王に輝いた後、2002年にアジア人初となる1位指名を受けてNBA入りした。スピードやパワーを疑問視する声も多かったが、ルーキーシーズンから期待以上の活躍を見せ、3年連続でオールスターゲームに出場。今年のファン投票では、史上最多となる255万8278票を獲得した。

経済面の心配も杞憂だった。ヒューストン・ロケッツとの契約は4年間で総額1800万ドルに相当し、マクドナルド、リーボック、ペプシ、ゲータレードなどと結んだスポンサー契約は年間1500万ドル以上の利益をもたらしている。

ヤオは周囲の不安をものともせずに結果を出してきたが、それは上達への強い意志があったからだ。NBAの現役センターの中で、彼以上に基礎的な技術が身についている者はいないだろう。229センチの長身にも関わらず、ヤオはジャンプショットを高確率で沈める。ゴール下からのフックシュートは、高さがあるだけでなく、しなやかで正確だ。今季のFG率は55・1%。NBA全体3位の成績である。また、過去の長身センターにない脚力もあり、早い展開の攻めにもかなり対応できる。尊敬するアービダス・サボニス(リトアニア出身の元NBA選手。身長は221センチ)と同じく、パスの精度も高い。

現在、NBA最高のセンターはシャキール・オニールだ。しかし、ヤオの練習に取り組む姿勢や、オニールの33歳という年齢を考えると、近い将来、トップの座がヤオに譲られることは間違いない。アジア人が頂点に立つ日は、すぐそこまで来ている。同じアジアに住む人間として、その過程を存分に楽しみたい。

■ヤオ家の未来像

ヤオの父親、ヤオ・ジーエンは身長201センチの元バスケットボール選手。母親のファン・フンディも、191センチの元バスケット選手で、中国代表チームでプレーしていた(両親の名字が違うのは、中国では結婚後に姓を変える必要がないため)。ヤオの恋人のイエ・リーも191センチ、中国代表チームの選手である。リーと同じ背番号11を背負い、彼女一筋だと公言してはばからないヤオ。ふたりが結婚することになれば、とてつもないバスケットボール一家が誕生することになる。ファンとしては、その子どもの身長も気になるところだ。

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