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五輪出場を逃した男子代表。日本協会の迷走は続く。 

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小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2007/10/29 00:00

五輪出場を逃した男子代表。日本協会の迷走は続く。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 先月のことだ。

 秋雨の中、都内某所で少人数のミーティングが開かれた。出席したのは、日本バスケットボール協会関係者、バスケット専門誌編集者、それから僕を含めたスポーツライターが数人。昨夏の世界選手権の総括レポートが配られ、そのレポートを元に、協会関係者による解説・説明を受けた。

 なぜ、いまごろ、世界選手権の話なのか?

 本来、そのレポートは、春の決算が終わった時点で広く配られるはずだった(一部の関係者・報道メディアには配布済)。だが、その決算が、なかなか審議されない。春が夏になり、夏が秋に。そうこうするうちに、レポートは時期外れになってしまった。

 決算に決着がつかない理由を説明するためにも、世界選手権を簡単に振り返ろう。

 日本初開催の世界選手権(男子)が開かれたのは、昨年の夏。外国人コーチに鍛えられた若き日本代表は、決勝ラウンドには届かなかったものの、将来に希望を持たせる闘いぶりを見せた。テレビ放送などで新たなファン層も獲得。強化・競技普及の意味で、意義のある大会だったと言えるだろう。

 だが、一方で、財政面では大苦戦だった。最終的な赤字は、13億円にも達している。

 「時間はたっぷりあったはず。準備が足りなかったのでは?」と批判されることも多いが、実際はそれほど単純な話ではない。

 誘致が決定したのは、1998年。しかし、それから、バスケットをめぐる環境は激変したのだ。一番の変化は、2003年に、国際バスケットボール連盟の事務総長がパトリック・ボウマンにかわったこと。ボウマンは、就任当時、弱冠35歳。5ヶ国語を使いこなし、スイス銀行で主任法務顧問補佐を務めた切れ者だ。改革に乗り出した彼にとって、就任後初となる世界選手権は、改革の象徴となるべきもの。新たな基準に基づく新たな要請が、相次いだ。参加チーム数や会場数の変更を受け、最終的に会場が決まったのは、04年。新ITシステム導入、警備体制の見直し、新たなTV放映システム──。さらに、スポンサー権やテレビ放映権についても、一定の買取りを義務付けられた。これに対応するため、協会は大手広告代理店と共同事業体を設立し、資金・人材面での協力を行なった。

 準備期間は、実質2年。その短い期間で、大きな変化に対応しなければならなかった。

 もちろん、13億の赤字を正当化するつもりはない。だが、当時のバスケットの認知度──テレビ放映権を売る際に、NHKや在京の民法キー局すべてに一度断わられたこと。最終的に放送が決まったときも、自らCM枠を買い切らねばならなかったこと──を考えると、大会準備そのものを批判しても意味がない。

 問題なのは、そのあとだ。

 赤字の処理をめぐって、協会内部は混乱した。対立が深まり、評議委員会が何度も流会。今年度の決算はもちろん、昨年度補正予算さえも成立できない状態に陥った。そんなカオスの中で、日本は五輪予選を迎えてしまった。

 今夏の北京五輪予選(男子)は、32年ぶりの五輪出場を目指す日本代表にとって、大きなチャンスだった。自国開催に加え、アジア最強の中国が五輪開催国であるため、アジアに一枠多く出場権が与えられたからだ。

 しかし、結果は史上最低の8位。五輪出場権はおろか、世界予選への出場権をも逃した。

 もちろん、大会に向けて準備しなかったわけではない。外国人ヘッドコーチの後任に、若き名将・鈴木貴美一が就任。ロースターには、世界選手権の主要メンバーに、ベテランの佐古賢一と、元NBA選手の桜木JR(直前に帰化)が加わった。

 若さと経験を兼ね備えた日本代表は、全勝で2次ラウンドに進出。決勝トーナメント進出の可能性も高いと見られた。

 だが、2次ラウンドの初戦、カザフに8点差で敗れてしまう。欧州型バスケットが特徴のカザフは、ビッグマンが積極的に3ポイントを狙うため、外角シュートの守備が特に重用だった。ところが、日本はそれを徹底できず、立ち上がりからつまずく。外角シュートを次々と沈められ、1Qで11点差。平均約22歳のカザフを勢いに乗せてしまった。

 勝てるはずの試合に敗れたことで、その後、日本はリズムを崩していく。韓国戦では、ピックアンドロールへの守備を徹底できずに敗北。集中力を欠いた順位決定戦では、格下の台湾にも敗れた。

 細かい敗因は、専門誌の解説に譲ろう。だが、8位より上を狙える力があったのは確かだ。そして、その責任は、間違いなく、選手やコーチだけのものではない。彼らを取り巻く環境が、この結果に与えた影響は大きい。

 世界選手権の総括レポートを読んでから、1ヶ月が過ぎた。秋も深まりつつあるある今、問題はまだ解決していない。

 ついに、日本オリンピック委員会(JOC)も調査に乗り出した。もちろん、異例の措置だ。最悪の場合、交付補助金の減額処分を下される可能性もあるという。

 10月中旬に、会長代行に就任した蒔苗昭三郎は、11月の早い時期に事態を正常化させたい、とコメントしている。JOCの圧力を考えると、近いうちに、大きな動きがあるはずだ。

 バスケットの競技人口は、約4億5000万人。日本だけでも、600万人を超える。競技専門誌の数も多く、昨年はバスケット専門フリーペーパーも創刊された。アイドル的人気を誇るガード・五十嵐圭は、写真集を出版。北海道の新チームを加え、新生JBLもスタートした。協会やJBLと袂を分かつ形で誕生したbjリーグも、リーグを全10チームに拡大している。急成長中のシューター・川村卓也、高い運動能力を誇る194cmのコンボガード・桜井良太、205cmの双子ビッグマン・竹内兄弟など、若手も育ってきた。さらに、女子日本代表については、まだ五輪出場のチャンスが残されている。世界最終予選は、来年6月。協会は、その大会の誘致を検討中だ。

 新しい形で、新たな方向に向けて、バスケット界は進んでいる。それを、良い形で社会的成功に結びつけてほしい。まさに今、競技とは別のところで、未来をめぐる闘いが行われている。明日、新聞を開いたとき、そこに良いニュースが載っていることを祈ろう。

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