MLB Column from USABACK NUMBER

C・C・サバシア争奪戦とトレード市況の様変わり 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2008/07/02 00:00

C・C・サバシア争奪戦とトレード市況の様変わり<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 7月末日のトレード期限まであとひと月、今季トレード市場最大の「目玉商品」は、インディアンスのエース、C・C・サバシアだ。今季終了後FA資格を取得する予定のサバシア、4月終了時点で1勝4敗防御率7.88と出遅れたが、5月以降は防御率2.19と復調、一時は暴落していた「商品」としての価値を完全に取り戻した(以下、数字は6月30日終了時点)。

 一方、インディアンスは、首位ホワイトソックスに10.5ゲーム差の地区最下位、今季については白旗を掲げ、来季以降を見据えた「チーム再建」を考えなければならない時期にさしかかっている。チーム再建のためには、シーズン終了後FAとなっていなくなってしまうサバシアを、優勝争いをしているチームに「即戦力」として売りつけ、年俸の安い若手有望選手と引き替えるのが常道である。

 ちょっと前までは、サバシアのように、FA資格取得目前のスター選手がトレード市場に出品された場合、獲得の可能性があるチームは、ヤンキースやレッドソックスなどの金満チームと相場が決まっていた。特にヤンキースの場合、今季、先発投手陣の手薄さは深刻なだけに、今までのパターン通りだったら、サバシアを獲得すると同時に長期高額契約を結び、数年先までを見越した先発陣補強に取り組んでいただろう(たとえば、昨オフ、メッツが、トレードで獲得したヨハン・サンタナと契約期間6年総額1億3750万ドルの契約を結んだのは、このパターンの典型である)。

 しかし、今季の場合、レイズのような貧乏球団がサバシア獲得の最有力候補の一つと噂されているのだから、時代も変わったものである。なぜ、トレード市況がかくも様変わりしたかだが、その最大の理由は、大物スター選手の「投資価値」が減じる一方で、若手有望選手の「投資価値」が高騰していることにある。たとえば、昨オフのサンタナ争奪戦の際、ヤンキースもレッドソックスも、ツインズが要求する若手選手を出し惜しみ、メッツに漁夫の利を得られる結果となったが、「サンタナ級の選手との引き替えでも出すのがもったいない」と両チーム首脳陣が考えるのが普通になるほど、若手有望選手の相対的価値が上がっているのである。

 こういった状況の下、レイズのマイナーには、インディアンスのフロントがのどから手を出してでも欲しいと思うような若手選手がごろごろ転がっている。チーム創設11年目にして初めて巡ってきたプレーオフ進出のチャンス、その気になりさえすれば、サバシア獲得は容易だと目されているのである(一方、ヤンキースは、サバシア獲得に伴う出費とリスクの大きさを避け、たとえば同じインディアンスでも、ポール・バードのような「2線級」投手を獲るのではないかとも噂されている)。

 では、なぜ、大物スター選手の投資価値が下がってきたかだが、その理由は、大物スター選手との長期高額契約は、「アホウドリ契約」に終わるリスクが高い事実が認識されるようになったことにある(アホウドリ契約については前回も論じたが、ある契約がアホウドリとなるかどうかは、選手の成績の善し悪しだけで決まるのではなく、投資した金額の多さとの相対的比較で決まることに注意されたい)。大物選手への投資が失敗した場合は自動的にアホウドリをつかまされる結果に終わるが、若手選手への投資が失敗したとしても金銭的損害は微々たるものであり、アホウドリをつかまされる心配をする必要はない。しかも、当たった場合は「タダ」のような低年俸で数年働いてもらえるのだから、投資価値は大きいのである。

 さらに、仮にレイズがサバシアを獲得した場合、シーズン終了後にFAとなって移籍することになるのは間違いないが、その補償としてドラフト上位2選手の指名権が与えられ(註)るので、若手有望選手をインディアンスに差し出した分の「損」を補うことも簡単である。レイズのような貧乏球団がサバシア級のスター選手をシーズン途中に獲得したとしても、ちっとも不思議ではなくなったのである。

(註)サバシア級の選手の場合、FA選手に去られたチームには、移籍先チームの1巡目指名権に加えて、1巡目と2巡目の間の「サンドイッチ指名権」が与えられる決まりになっている。

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