総合格闘技への誘いBACK NUMBER

「意識の差」が生んだ予想外の結末。 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph bySusumu Nagao

posted2009/01/19 00:00

「意識の差」が生んだ予想外の結末。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 昨年末の『Dynamite!!』を観戦し誰もが驚かされたのは、総合格闘家たちの打撃での強さである。

 武田幸三×川尻達也をはじめ、K-1ルールで執り行われたバダ・ハリ×アリスター・オーフレイム、武蔵×ゲガール・ムサシなど、総合格闘家がK-1のトップファイターをことごとく畑違いの立ち技で打ち破るといった予期もしない現象があちこちで起こったのだ。リングで勝ち鬨をあげる総合格闘家たちを目の当たりにするにあたって新鮮な驚きと、複雑な思いに駆られたものだ。

 確かに、リスク承知のやるかやられるかの真っ向勝負を挑んだ武田や試合感覚が短く万全の調子ではなかったバダ・ハリ、さらに畑違いの選手に絶対に負けてはいけないという強いプレッシャーから本来の実力を出し切れなかった面はあるとは思うが、それにしたってこの結果は意外だった……。

 決して長くはない総合格闘技の歴史ではあるが、試合技術の向上は猫の目のように変化している。寝技有利な時代もあったし、打撃有利な時代もあった。さらに技術は目覚しい進化をとげパウンド優勢の時期もあり、現在では“打・投・極”トータルでの高いレベルではもちろん、さらにその中に突出した技術がなければ勝てないといわれる。その末路が今回の結果のような気がしてならない。

 戦い方もまた総合格闘家ならではの特性が出ていた。K-1ファイターは、間合いを操作することで徐々に試合を作っていく傾向にあるが、総合格闘家たちは、試合を有利に進めるために先手必勝とばかりに積極的に前へ出て行く。そのアグレッシヴなファイトスタイルにK-1ファイターたちは面を食らい本来の戦い方が出来ず後手に回ってしまった。誤解を恐れずに言えば、立ち技は制空権に入らなければ自分の身の安全は確保できる。だが、展開が目まぐるしくタックルなどある総合格闘技は、相手との間合いが離れていても決して油断することはできない。そのあたりの“意識の差”が如実に現れたのではないだろうか。

 また、K-1ファイターがいることで、会場に微妙な熱が生まれたのも興味深いことだった。

 DREAMが誕生して初めての『Dynamite!!』。しかも会場はこれまで開催していた大阪ドームではないく、PRIDEの聖地だったさいたまスーパーアリーナであり、観衆の反応を見るかぎり旧PRIDEファンが多数をしめていた。ゆえに谷川貞治イベントプロデューサーが登場するとブーイングが浴びせかけられ、一部のK-1ファイターも同じような洗礼を受けていた。一方、旧PRIDE出身やDREAMで活躍する総合格闘家たちは、まるで“オレたちのファイター”とばかりにヤンヤの歓声が送られていたのが印象的だった。

 かつてあったPRIDE vs. K-1といった対立構造を久しぶりに見る思いがし、結局はこういった単純な関係性が観衆の心根に響くんだなと実感。良くも悪くも、“K-1”という存在感が、総合格闘技やファイターを輝かせる大きなファクターとなった年末興行だったといえよう。今後、K-1ファイターたちが総合格闘技に対して、どんなアクションを起こすのか注目したい。

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