MLB Column from USABACK NUMBER

マニー・ラミレスの「重責」。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byEzra Shaw/gettyimages/AFLO

posted2004/05/20 00:00

マニー・ラミレスの「重責」。<Number Web> photograph by Ezra Shaw/gettyimages/AFLO

 レッドソックスのマニー・ラミレスが頑張っている。シーズンオフには、ウェーバーにかけられたり、アレックス・ロドリゲスとのトレードが成立しかけたりと、レッドソックスから2度も三行半(みくだりはん)を渡されただけに、感情的なしこりが残るのではないかと心配されたが、まるで何事もなかったかのように、はつらつと活躍しているのだ(5月16日現在OPS10割3分1厘はア・リーグ4位)。今季のレッドソックスは、ノマー・ガルシアパーラ、トロット・ニクソンと主力選手2人を故障で欠き、ラミレスにかかる負担が一層重くなっているだけに、その活躍にファンはほっとしている。

 そもそもレッドソックスがラミレス放出に動いた理由は、度重なる「怠慢」プレーや、試合を病欠している最中にライバル、ヤンキースのエンリケ・ウィルソンとディナーに出かけた事件で、チームの士気に悪影響を与える存在と判断したことにあった。

 しかし、ラミレスは、自分から喧嘩を売ったり、蔭に回って人の悪口を言うタイプの人間ではなく、彼が巻き込まれたトラブルにしても、すべて、うっかりミスや、善意から出た行動に常識が欠けていたりすることが原因だった。昨シーズンは、まるで、「チームワークを乱す大悪人」かのようにボストンのメディアに叩かれたが、根は愛すべき好人物なのである。

 ラミレスの好人物ぶりは、メディアよりもファンの方がよく知っているのではないだろうか?

 守りに着いているときのラミレスは、常にファンとのインターアクションを楽しみ、逆にファンも彼とのインターアクションを楽しんでいる。たとえば、フェンウェイ・パークでは、試合中何度も観客が両腕を挙げるウェーブが球場を回るが、ラミレスは守備位置から観客席のウェーブに参加するほどなのである。

 昨年のラミレスはインタビューを拒否、そのこともメディアからバッシングを受ける原因となったが、今年は「本当の自分をアピールしたい」と、にこにことメディアのインタビューに応じている(ラミレスはドミニカ共和国出身だが、一般に、ヒスパニックの選手がインタビューを嫌がる大きな理由に、英語が苦手なことがある)。

 開幕から全試合出場を続けていたラミレスが、5月10日のインディアンズ戦を欠場してファンを心配させた。欠場の理由は、米国市民権を得る手続きのために居住地のフロリダに出向かなければならなかったからだが、翌日の試合、晴れて米国人となったラミレスは星条旗を持ちながら守備位置に走り、ファンの拍手喝采を浴びた。

 一方、うっかりミスの多いラミレスが米国人となったことで、野球界には新たなジョークが流行っている。4年前の大統領選挙はフロリダの大接戦で票の集計がやり直される混乱を招いたが、今年11月の大統領選挙は、うっかり者のラミレスの1票が勝敗の分かれ目になる、というのだ。

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