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野村・楽天、好調の秘密!?
飛ぶボールと飛ばないボール。 

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田端到

田端到Itaru Tabata

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photograph byTomoki Momozono

posted2009/09/14 13:30

野村・楽天、好調の秘密!? 飛ぶボールと飛ばないボール。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

 楽天イーグルスが初のクライマックスシリーズ進出へ向かって、快調にひた走っている。

 シーズン前半戦は38勝44敗1分で借金6つだったのが、後半戦は25勝12敗で貯金13(9月12日終了時点。以下同)。野村克也監督のボヤキにも自然とニヤケが混じる。

「楽天は7月28日の後半戦から、主催試合での使用球をゼット社のボールからミズノ社のボールに変更する」 

 後半戦開幕の頃、スポーツ新聞各紙にこんな記事が載った。一般的に、ゼット社のボールは飛びにくく、ミズノ社のボールは飛びやすいと言われている。飛ぶボールに変わることで、打つほうも投げるほうもホームランの増加が予想され、野村監督は期待半分、不安半分、といった記事だった。

試合使用球の選択でチームの流れが変わることがある。

 結果から見れば、この変更は楽天にとって大吉と出た。前半83試合で54本だったチーム本塁打は、後半37試合で36本と一気にペースアップ。なかでも山崎武司の量産ぶりはすさまじく、12日のソフトバンク戦で放った35号は、後半戦早くも15本目のホームランとなった。

 もちろん好調の理由をすべてボールに求めるのは失礼だろう。使用球の変更と関係ないビジターのゲームでも、楽天は勝ち星を増やしているし、山崎はホームランを多数打っている。それでもこれだけタイミング良く、飛ぶボールの使用とチームの好調が重なると、「戦略としての使用球」についてあらためて考察してみたくなる。

 飛ぶボールが騒がれていた2004年にも、中日がシーズン前半の6月に使用球を変更したことがあった。投手力と堅い守りを売りにした当時の落合ドラゴンズにとって、飛びすぎるボールは大敵で、目指す野球の実現をこばむものだった。そこで飛ばないボール(というより普通のボール)に変更、この年、中日はセ・リーグ優勝を勝ち取った。

 もっと古い話では、江夏豊のエピソードも紹介しておきたい。

 阪神に在籍していた江夏が、自分はチームのエースになったんだと自覚したのは、キャンプ中にそのシーズンの使用球の選択を任されたときだという。それまで阪神の使用球は、村山実が決めていた。ところがそのシーズンからは、江夏が決めることになった。フォークボールを決め球にした村山と、大きく曲がるカーブを使う江夏では、しっくりくるボールが違う。エースに合う球がチームの使用球になる、その責任の重さに江夏は身が引き締まる思いだったという。

使用球を変えた後のチーム本塁打数が一気に増えた楽天。

 楽天が、前半戦は飛びにくいボール、後半戦は飛びやすいボールを使うようになったのは'07年からだ。その違いは数字にはっきりと表れており、昨季'08年のチーム本塁打も、前半戦は1試合あたり0.47本、後半戦は1.22本だった。軽く倍以上の違いがある。

 ここに何か意図的な戦略があるのか、それとも単にメーカーとの契約上の都合による使い分けなのかは、よくわからない。各球団がどのメーカーのボールを使っているのか、どのように使い分けているのかは、なぜか公式には非公開の情報で、どこも喜んでは話したがらないからだ。

<次ページに続く>

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