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全国有望高校生投手・MAXスピード紹介 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2005/08/02 00:00

全国有望高校生投手・MAXスピード紹介<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 アマチュア投手を紹介するとき「MAX145キロ」という表現をする。それに対して、「平均132〜135キロ」と表現するほうが、その選手の現実的な能力をリアルに表すことになるのでは、と考える人もいる。僕は平均値より最大値が大事だと考えているので、できるだけ「MAX145キロ」という書き方をする。アマチュアは現実より可能性のほうに目を向けるべき、というのが基本的な考えだからだ。

 1回でも145キロの速球を投げれば、その投手の可能性は「145キロ」を基本にして考える。だから、試合中、スピードガンを持っている学生の偵察隊がいれば「○○のMAXは何キロ?」と聞く。「平均で134、5キロです」と答える学生もいるが、「MAXは?」と改めて聞く。そもそも、平均値で紹介するより最大値で紹介したほうが、書き手としても楽しいのである。

 というわけで、今回は7月10日以降に観戦した各府県大会35試合のうち、心に残った投手たちの、その試合での最大スピードを紹介することにする。

7/10 西村直也(春日部東高)右右 182・67

  対狭山清陵高  138キロ(自己最速は140キロ)

7/11 澤村拓一(佐野日大高2年)右右 184・74

  対国学院栃木高 134キロ(自己最速は143キロ)

大平太士(佐野日大高)左左 178・74

  対国学院栃木高 136キロ

7/13 村中恭平(東海大甲府高)左左 186・80

  対山梨高    140キロ(自己最速は144キロ)

穴水龍太(東海大甲府高)右右 181・77

  対山梨高    139キロ

7/14 高江洲拓也(府中工)右右 185・70

  対日大三高   137キロ

7/16 野口恭(桐生高)右左 180・68

  対桐生南高   134キロ

相澤寿聡(太田商)左左 180・83

  対前橋南高   136キロ

7/23 丹羽力人(土岐商)右右 182・76

  対岐南工    145キロ(自己最速は147キロ)

7/24 片山博視(報徳学園)左左 192・88

  対龍野実    139キロ(自己最速は144キロ)

7/25 鶴直人(近大付高)右右 180・71

  対PL学園   137キロ(自己最速は151キロ)

中田翔(大阪桐蔭高1年)右右 183・80

  対汎愛高    147キロ

 以上は、スピードガンを持った学生がいた試合に限って判明した数字。ガンがなくても「速いなあ」と思ったのが次の選手たち。推定だが、130キロ台後半から140キロ台前半には達しているはずだ。

戸村 健次(立教新座高) 右右 185・75
増渕 竜義(鷲宮高2年) 右右 182・72
秋元 光雄(三浦高) 右右 178・72
柳沢 久志(県川崎工) 右右 176・70
川角  謙(横浜高2年) 左左 180・75
佐藤将太郎(横浜創学館高1年) 右右 176・72
佐野 宏明(茅ヶ崎高) 右右 181・69
前田 健太(PL学園2年) 右右 181・68

 今年の高校生は大豊作で、投手なら145キロ超を達成しているのが、1〜3年生を含め20人以上。そういう中で、ここに紹介した西村たちの「138キロ」前後のスピードは大したことがない。しかし、スピードを礼賛する一方で投手は速さだけではない、とも言いたい。筋力不足で高校時代はスピードが今いちでも、体作りが進むごとに速さが増し、大学、社会人で注目される投手は少なくない。そういう変身を可能にするのが投球フォームである。

 今回紹介した投手たちのフォームは一長一短あるものの、全体的に見れば悪くない。たとえば、野口恭(桐生高)は全国的な知名度はないが、ヒジを柔らかく使えるというのが第一の長所。見た目で、投げにいくときヒジが立っているのがわかる。テークバックに向かうとき、内側から腕を回していかないと、こういうヒジ使いはできない。左肩の早い開きがなく、体の上下動もないのでコントロールは安定し、ストレートの低目への伸びも一級品。

 マスコミの野口評は技巧派投手としてのものがほとんどだが、僕の中には3、4年後には“和田毅的”変身を遂げているのではないか、という楽しみがある。野口だけではない。西村、増渕、秋元、柳沢、川角、佐藤、佐野という無名選手にも同じような可能性を感じる。僕が見ている高校野球はあくまでも一部なので、野口的な可能性を持つ選手は全国に無数にいるということにもなる。

 次回は甲子園大会に出場する注目選手に光を当てていこうと思っている。

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