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突然引退したラミレス。
奔放な男の意外な一面。
~野球への姿勢と日本への愛着と~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2011/04/22 06:00

突然引退したラミレス。奔放な男の意外な一面。~野球への姿勢と日本への愛着と~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

キャリア最後のヒットは、2日のオリオールズ戦の8回に上原浩治から放った一打だった

 あまりに突然だった。8日、メジャー屈指の強打者、マニー・ラミレスの現役引退が、メジャーリーグ機構から発表された。通算19年間で555本塁打、2574安打、1831打点など、輝かしい記録を持つ名選手の進退が、自らの口からでも、所属球団のレイズからでもなく、事務局からほんの5行の文章でリリースされたこと自体、異例だった。

 レイズに移籍した今季、開幕から5試合でわずか1安打。打撃不振は明白だったが、引退の直接的な理由は、薬物使用だった。機構側の発表などによると、春季キャンプ中の薬物テストで禁止薬物の陽性反応が検出された。ラミレスはドジャース時代の'09年にも薬物使用で50試合の出場停止処分を受けた前歴があるため、2回目は100試合停止の厳罰を避けられず、本人が現役引退を受け入れたのだ。「寝耳に水」の一報に、レイズは「驚きと失望を禁じ得ない」との声明と、この件について今後は一切コメントしない意向を発表した。

「現役最後は日本でプレーしたい」と本気で漏らしていたことも。

 ラミレスといえば、肩まで伸びたドレッドヘアの容貌に加え、奔放な言動で再三マスコミから集中砲火を浴びるなど、お騒がせ男としても有名だった。

 その一方で、野球に取り組む姿勢は、あまり知られていない。一見、天才肌のように思われがちだが、打撃に対する探求心は生半可ではない。試合終了後は10分足らずで誰よりも先にクラブハウスを後にするものの、翌日は午前中に球場入り。独自のトレーニングを終えると一度帰宅し、全体練習前に再び姿を見せることも珍しくなかった。試合前、ビデオ映像に見入るのも、対戦相手ではなく、自分の打撃フォームがほとんどだった。レッドソックス時代、イチローに助言を求めただけでなく、投手の松坂にまで打撃について質問をするほど、常に向上心を持ち続けていた。

 米メディアには口を閉ざすことが多い一方で、親日家でもあった。試合前には毎日のように大好物のうどんやおにぎりを食べ、「現役最後は日本でプレーしたい」と本気で漏らしていたこともあった。

 薬物使用が明らかになったことで、将来的に殿堂入りする可能性は低い。だが、無類の勝負強さを誇った打撃と、茶目っ気たっぷりの笑顔が、ファンの記憶から消えることはない。

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