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大村直之の心に響いた王監督の決め台詞とは。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2005/01/20 00:00

 最近のダイエーは小久保裕紀、村松有人、井口資仁とFAやトレードなどで選手が出ていくばかりで、やってくるのは他球団を自由契約になった選手という有様だった。しかし、ソフトバンクが新しく親会社になったおかげで、工藤公康(現巨人)以来、久しぶりに主力級の選手、大村直之を獲得した。

 昨年、プレーオフに敗れた後、王貞治監督は野手陣の駒不足を指摘していた。村松の抜けた穴を井出正太郎、辻武史といった若手が埋めてくれることを期待したのだが、彼らには荷が重かった。短期決戦のプレーオフでは選手層の薄さを露呈。控え不足はレギュラーにも悪影響を与え、柴原洋、バルデスが致命的な走塁ミスを犯すと「安心感から来る油断」と監督は嘆いていた。

 それだけに大村獲得には積極的に動いた。日ハムとの争奪戦となると、監督自ら勧誘の電話をかけたのだ。欲しい選手に直接電話するのは王監督の常套手段。楽天の監督となった田尾安志に打撃コーチを要請した時もそうだった。「王さんに声をかけられてグラリとこない人はいない」と田尾は言っていた。大村も王監督からの直接の勧誘にグラリときた。「一緒にやろうと言われて、厳しい競争の中でチームに刺激を与えてくれと言われた時、3年契約5億円という金額より、もう一度自分を鍛えなおすチャンスだと思った」とダイエー入りを決心。慣れた場所で老け込むよりも、環境を変えてかつての自分を取り戻したい思いで契約を交わしたのだった。

 大村には新天地で、いくつかなさねばならないことがある。ひとつはビールかけ。'01年に近鉄で優勝した時には、同時多発テロのために自粛され、悔しい思いをしたからだ。もうひとつは近鉄の仲間に応援してもらうこと。大村のいた近鉄は合併され、オリックスに行く者、楽天を選んだ者というようにバラバラになってしまった。選手会の納会では「シーズンの最後まで野球を続ける連中を無条件に応援しよう」と誓い合った。それだけに最後まで試合をしている可能性が高いダイエーに移籍した自分が、みんなに応援してもらうようにならねばと思っているのである。

 王監督の「競争原理の中から最高の自分を磨き出せ」という言葉を胸に、大村は新しい環境での勝負に臨む覚悟だ。

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