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成功率90%、進化したトミー・ジョン手術。 

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出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2004/05/20 00:00

成功率90%、進化したトミー・ジョン手術。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「あの手術法が生まれなかったら、僕の野球生命は多分終わっていただろうね」

 約2年ぶりのマウンドに立ち、7イニングを5安打3点に抑え、復帰を勝利で飾った翌日の5月2日、ジョン・リーバーはヤンキースのクラブハウスで静かに振り返った。

 肩に感じた違和感の原因が、実は右肘にあることがわかったのは一昨年の夏。診断は内側側副靭帯断裂。完治には靱帯の移植手術が必要だった。いわゆる、トミー・ジョン手術である。

「全身麻酔で2時間半。自分の右足の不要な靱帯を移植してもらった。痛みが完全に消えるまで6週間ぐらいかかった。それから1日4、5時間の本格的なリハビリが始まった」

 この手術法は1974年に、当時ドジャースのチームドクターだったフランク・ジョーブ博士が開発したもので、初めての患者となったのが、その手術の通称として名を残すことになるトミー・ジョン。この手術後、ジョンは3度にわたって20勝をマークするなど164勝をマークして、同じ故障に悩む投手たちに光明をもたらした。

 この手術によって選手生命を救われた投手は、一体どのぐらいの人数に上るのだろうか。リーバーが復帰した日、ヤンキースのブルペンにはトム・ゴードンとマリアノ・リベラが待機していたが、この2人も同じようにメスを入れている。ある調査によると、メジャーに登録されている投手のうち、80人近くがトミー・ジョン手術を受けているという。その中には、ケリー・ウッド、ジョン・スモルツらリーグを代表する投手も含まれている。かつての復活ドラマは、今や感動ドラマとしてセンセーショナルに取り上げられることもなくなった。

「手術をしたあとの最大のチャレンジは、我慢することだね。つらいリハビリに耐え、投げられないもどかしさにも耐えなければならない」と、リーバーはいう。

 トミー・ジョン手術の成功率は、この30年間で上昇を続け、現在は90%にも達している。また、リハビリの方法も改善されて、球速が手術前の状態に戻るだけでなく、むしろ速くなったという事例まで報告されている。スポーツ医学の進歩は、新たな領域に入ってきたようである。

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