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ついにリンクを去る、
“努力の人”清水宏保。
~世界最速スプリンターの引退~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

posted2010/02/01 06:00

ついにリンクを去る、“努力の人”清水宏保。~世界最速スプリンターの引退~<Number Web> photograph by Keisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

金メダルを獲った長野五輪と同じ会場での選考会。最後は花束を持ち、リンクを一周した

 岡崎朋美の5大会連続五輪代表入り、15歳で五輪代表となった高木美帆など、華やかな話題の多かった昨年末のスピードスケート五輪代表選考会。そのかたわらに、5度目のオリンピック出場を逃がした一人のベテランの姿があった。35歳の清水宏保である。

 清水は1994年のリレハンメルでオリンピックに初めて出場すると、続く長野の500mで金メダル、1000mでは銅メダル、'02年のソルトレイクシティでは、500mで銀メダルを獲得。500mの世界記録も4度更新している。まぎれもなく世界最速スプリンターであった。しかし、30歳を前にした頃から、故障などの影響で思うような滑りができなくなる。'06年のトリノは500mで18位、今回の代表選考会も500m7位、1000m9位に終わり、バンクーバー五輪への切符を手にすることはできなかった。今後についての明言は避けたが、1000mのレース後、場内を一周。母から花束を受け取ると、笑顔を浮かべた。

「もうすぐ36歳になる中で、いい滑りは見せられました。悔しい気持ちもありますが」

 今回を機に、オリンピックへの挑戦は終わり、リンクから去ることになる。

厳しい練習と「ロケットスタート」で世界の頂点へ。

 しかし、清水の価値が色あせることはない。実績もさることながら、彼の真価は、世界のトップにたどり着くまでの尋常ならざる努力と創意工夫にある。身長が162cmとひときわ小柄な清水は、少年の頃から「小さいのだから人の何倍も練習しなければだめだ」との父の教えを守り、練習に明け暮れた。日本代表に名を連ねるようになっても、ジム内の自転車を利用したトレーニングで、失神するほど自分を追い込んだ。

 こうして鍛え上げた筋肉をいかし、沈み込むような低い姿勢からスタートを切る「ロケットスタート」を完成させた。スピードスケートでは、空気抵抗をいかに減らすかも重要とされるが、他の選手より低い重心からスタートし、しかも重心を上げずに滑ることで、体格差をものともしないスピードが生まれたのだ。

 12月30日、代表選手が決定すると、清水は19人全員と握手を交わして激励した。小さな巨人の功績を受け継ぐことができるか、バンクーバーでのスピードスケート陣の奮起を期待したい。

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