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野球のぼせもんBACK NUMBER
戦力外通告でショック「ぼそぼそ小声で…まさかの言葉」ソフトバンク現地記者が初めて聞いた“田浦文丸の本音”…ダルビッシュ絶賛、村上宗隆を抑えた男の苦悩
posted2025/11/18 11:01
ダルビッシュが絶賛した“魔球”を持つ前ソフトバンク・田浦文丸
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
8年間ユニフォームを着たソフトバンクから戦力外を言い渡された田浦文丸は当初、トライアウトを受験することに消極的だった。
「現役を続けたいか、区切りをつけるか。気持ちは半々です」
番記者は球団事務所から出てくるところで待つ。筆者もその1人だったのだが、毎年この取材が一番つらい仕事だ。
戦力外当日、ぼそぼそと小声で…「半々です」
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田浦はどちらかと言えば無口タイプだ。それに通達直後のショックもあっただろう。取材の応答もいつも以上にぼそぼそと小声だった。
26歳という年齢を考えれば、まだやれる自信もあるのではないかと水を向けたが、
「半々です」
と短く返すだけ。
質問に困った記者たちと田浦とのあいだで気まずい沈黙が流れる。
田浦といえば何か。それはとりわけ、チェンジアップである。その球を武器にプロの世界に飛び込み、2023年シーズンには45試合に登板するなど一軍の舞台でも輝いたのではなかろうか。チェンジアップについて語るならば、ちょっと饒舌になるかもしれないと気を引こうとした。
だが、田浦は俯き加減のまま、こう答えた。
「僕の中では全然通用しないボールでした」
まさか、の言葉だった。
田浦のあのチェンジアップが通用しなかったというのか。あれは紛れもなく「魔球」だったはずだ。
「なんだ、今のは?」世界に衝撃の“魔球”
身長168cmの小柄な左腕が“世界”を驚かせたのは今から8年前の夏のことだった。
高校生の侍ジャパン戦士たちがカナダで臨んだ「2017 WBSC U-18ワールドカップ」。当時秀岳館高校(熊本)の3年生だった田浦が、驚異の奪三振ショーを見せたのだ。
主にリリーフとして6試合に登板。13回2/3の投球回で29奪三振を記録したのである。日本代表はこの大会で3位。代表メンバーには小園海斗(現広島)や清宮幸太郎(現日本ハム)、清水達也(現中日)、藤原恭大(現ロッテ)も名を連ねていた中、田浦だけがチームから唯一大会ベストナインに選ばれた。

