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「青木宣親さんがやってきた!」普通の工業系高校“初のドラフト指名”はなぜ起きた? ヤクルト育成1位左腕は「右利き用グローブで野球始めました」

posted2025/11/14 17:00

 
「青木宣親さんがやってきた!」普通の工業系高校“初のドラフト指名”はなぜ起きた? ヤクルト育成1位左腕は「右利き用グローブで野球始めました」<Number Web> photograph by Kawasaki city high school for Science and Technology

学校で初のNPBドラフト指名で、川崎総合科学高校は沸き返った。ヤクルトの青木GM補佐(右)の来校に、小宮悠瞳本人はもちろん、遠藤監督(左)もニッコリ

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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Kawasaki city high school for Science and Technology

甲子園には無縁、市立の工業系高校から初めてドラフト指名される選手が現れた——。ちょっとしたフィーバーを巻き起こしたその少年、小宮悠瞳(ゆめ)はいかにしてプロの目に留まったのか。硬球を握ってまだ2年半、伸びしろしかない左腕を母校・川崎総合科学高に訪ねた。〈全2回の1回目/つづきを読む

 秋の夕暮れ時、川崎駅方面から車で多摩川沿いの道を走っていると、ひと際目立つ高層ビルが見えてきた。ガラス張りのオフィスビルにも見えるが、近づくと、側面には『川崎総合科学高等学校』とある。

日本一高い高層校舎の高校

 1963年に川崎市立工業高校として創設され、93年に改称した公立高校だ。恐る恐る入った高層校舎は、その前年に完成している。今秋のドラフトでヤクルトから育成1位指名された小宮悠瞳は、放課後の静かな校内で待っていた。あどけなさが残る18歳の左腕は、屈託のない笑みを浮かべて教えてくれた。

「僕、ディズニーが好きなんですけど、『タワー・オブ・テラー』(約59mのアトラクション)よりもうちの校舎は高いんですよ」

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 高さ約70m、地上15階建て。単独校舎では日本一高いという。敷地内には人工芝の小さなグラウンドと、校舎1階にも土の練習スペースがある。野球部は近隣にある複数の球場でも練習し、熱心に取り組んでいるが、激戦区の神奈川をいまだ勝ち抜いたことはない。上位進出もなかなか難しく、甲子園とは無縁。今夏の神奈川県大会は3回戦で敗退している。

 NPBドラフトにかかる選手が出るのも、創立以来、初めてのことだ。2階のエントランスに設置された指名祝いの立て看板は、小宮も学ぶ建設工学科の先生がドラフト当日の夜に突貫作業で制作してくれたもの。メディア向けの案内も出しておらず、指名記者会見を開くこともなかった。

 ドラフト指名から4日後。10月27日の午後2時頃、青木宣親GM特別補佐らヤクルト関係者が指名挨拶のため高層校舎に訪れると、野球部を指導して20年目を迎える遠藤順久監督は球児のように胸を弾ませたという。

【次ページ】 人生であの青木さんと話す機会があるなんて

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