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「丸2日、寝てない」岡田彰布を襲った“異変”…最後のCSで敗れ「じつは極秘入院していた」阪神監督退任の真相「なんやろな、急に力が抜けてしまったわ」
posted2025/11/08 17:00
阪神に38年ぶりの日本一をもたらした翌年、監督を退任した岡田彰布
text by

内匠宏幸Hiroyuki Takumi
photograph by
Takuya Sugiyama
「丸2日、寝てない」CS直前に岡田を襲った“異変”
11月25日、岡田彰布は誕生日を迎えた。67歳のバースデーは実に穏やかだった。重い鎧を外し、岡田に健康な体と、健康な心が戻ってきた。
「メシがとにかくうまくてな。よく食べるわ。おかげで体重が4kgも増えた」。どうしてここまで嬉しそうに語るのか。それは1カ月ほど前、岡田はとんでもなく苦しんでいたからだった。
前兆はあった。長いペナントレースが終わり、クライマックスシリーズ(CS)に挑む前、練習後に体温を測った。36.9度。平熱より少しだけ高かったが、妙に体がだるかった。その夜、早めに布団に入った。頭の中でCSの構想を考える。時間が過ぎる。目を閉じる。でも眠りにつくことができない。一睡もできぬまま、朝を迎えた。
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翌日も同様だった。シャキッとしないまま、練習に出て、自宅に戻る。ダルさがひどくなっていた。眠れない。疲れているのに眠れない。「丸2日、寝てない」。目を赤くして、こう打ち明けた。好きな酒も欲しくはなかったし、食欲も消えた。
次の日、甲子園の室内練習場に向かう階段も手すりが必要だった。室内からグラウンドに移動するのに、球団関係者が車を用意するほどだった。息をするのもゼ~ゼ~と吐き、せき込むことがあった。ノックバットを杖代わりにするほど、状態は悪化していた。
「病院で診てもらわないと」と勧めると、意外なほど素直に返してきた。「これから行ってくるわ」。これまでなら「大丈夫や。心配いらん」と突っぱねていた人間が、初めて弱みを見せた。
その日、病院で応急処置として点滴を施され、軽い睡眠薬をもらって帰った。少しは楽になったが、時は容赦なく進む。監督が体調不十分のまま、DeNAとのCSが始まった。

