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巨人スカウト「2位では指名するから」「えぇ?」長野久義の父親もパニック…日本ハム4位指名、ロッテ2位指名、2度の“入団拒否” 現役引退・長野のドラフトウラ話
posted2025/11/02 11:00
今季限りで現役引退した巨人・長野久義(40歳)。写真は2009年、巨人から1位指名され、原監督と握手
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中溝康隆Yasutaka Nakamizo
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JIJI PRESS
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「脂が乗り切った状態、つまり、思い通りに体が動くのは、あと10年ぐらいだと思います。10年後は35歳ですか……。そこまでやれる人も、一握りですからね」(週刊ベースボール2009年11月16日号)
16年前、長野久義は、三度目の正直で巨人からドラフト1位指名を受けた直後に、そんな冷静な言葉を残している。2006年の日本ハム4位指名、2008年のロッテ2位指名を拒否してまで巨人入りにこだわった長野は、2025年限りでの現役引退を表明した。25歳でプロ入りした青年は、40歳となり、今後は大学院進学を目指すことを引退会見で明かしている。
「2位では指名するから」「えぇ…」
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小学5年生のとき書いた「15年後のぼく、わたし」という作文で、「ぼくはジャイアンツにドラフト1位で指名されました」と夢を綴った長野だったが、ドラフトで憧れの球団とすれ違い続ける内にその思いが揺らいだこともあった。二度目のドラフト会議前、巨人側から1位は高校生外野手の大田泰示(東海大相模高)で、自身は2位指名を考えていると伝えられた際に長野は動揺を隠せなかった。巨人元スカウトの長谷川国利が、ドラフト後に福岡県久留米市の長野の実家に訪れ指名できなかったことをお詫びした際、長野の父も怒っていたという。
「『1位ではいけないけど、2位では指名するから』という話を事前に知らされた長野の反応は、「えぇ……」というものでした。社会人で結果も出していましたから当然です。私も心苦しく思いながら伝えました。2年待ったのに1位ではない――。このとき『分かりました』という明確な返答はありませんでしたから、長野も相当ショックだったと思います」(ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録/長谷川国利/カンゼン)
ロッテの2位指名に一時は気持ちが傾き、悩む長野を心配したホンダの安藤強監督は、「大自然の中、1人でゆっくり考えてみるのもいいんじゃないか」と気分転換にホンダのコーチの実家がある熊本県の南阿蘇村へのひとり旅をすすめるほどだった。最終的にホンダでもう1年プレーすることを決めた2009年は、ロッテとの交渉期限が切れた直後の2月5日に巨人が異例のドラフト1位指名を公表。


