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日本シリーズ連敗の阪神に抱いた「3つのナゼ?」藤川球児監督の采配にみえた“迷い”の正体…“山川封じ”の対策は万全だったのか
posted2025/10/29 17:20
日本シリーズ第3戦で連敗を喫して1勝2敗となった阪神・藤川球児監督。その采配には“迷い”も垣間見えたか…?
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
甲子園球場がスタンドを埋め尽くした虎党のため息ばかりに包まれた。
スミ1での連敗。チャンスは作りながら、あと1本が出なかった打線。そして先発の才木浩人投手も好投は報われず、警戒していたソフトバンクの主砲・山川穂高内野手の一発から沈んでしまった。
この試合の阪神には3つの「なぜ?」があった。
【疑問1】山川対策は万全だったのか?
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1つは前述した山川対策である。
第2戦で本塁打を含む2安打5打点と爆発したソフトバンクの主砲。指名打者が使えなくなった第3戦で小久保裕紀監督は、守備には目を瞑る形で「4番・一塁」に起用してきた。それだけバットへの期待が大きい表れとも言える。逆に言えば阪神バッテリーにとっては、第2戦で打ち込まれた山川をどう封じるか――それがこの試合の最大のテーマだった。しかし阪神バッテリーの選択は意外なものだった。
落とし穴は4回の第2打席だった。
2回の第1打席。山川への警戒感は全て外角に外れるボールで、ストレートの四球を出したことにも現れていた。そして問題の2打席目。初球のカーブが外角に外れた2球目だ。真ん中から外寄りに甘く入ったスライダーを、センターバックスクリーン左に放り込まれた。
またも全て外角の配球である。
「ちょっと真ん中気味にいってしまった。あの辺を上手く打てる選手というのは把握していましたけど、そこは自分の投げミスというか……実力不足というところかなと思います」
第2戦でも外角一辺倒で2安打され、第3打席以降はインコースをしっかり攻めて2三振を奪っている。長打警戒で外中心の配球はセオリーだが、その中で胸元をついて少しでも起こす作業がないのはなぜだったのか。それがないまま甘いスライダーにしっかり踏み込まれて浴びた同点アーチで、試合の流れは一気にソフトバンクへと傾いてしまった。
藤川球児監督の采配にも迷いが見えたように思う。

