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「坂本勇人を使えたのはチーム力があったから」原辰徳がいま明かす“巨人選手育成の難しさ”「勇人を使い出したのは、へこたれない強さが…」

posted2025/11/11 11:00

 
「坂本勇人を使えたのはチーム力があったから」原辰徳がいま明かす“巨人選手育成の難しさ”「勇人を使い出したのは、へこたれない強さが…」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

2007〜14年の間に6度リーグ優勝した巨人において、原辰徳監督は編成面でも力を発揮した

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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SANKEI SHIMBUN

 高くジャンプするためには、深くしゃがまなければならない――。若手育成のため、目の前の負けがある程度許容されることも、チームによってはあり得る。だが、全てのシーズンで優勝を求められる巨人では話は別。そんな名門球団で黄金期を築いた男のドラフト哲学とは。
 発売中のNumber1130号に掲載の[特別インタビュー]原辰徳「ドラフトだけでは完成しない」より内容を一部抜粋してお届けします。

原辰徳が語る「三位一体のチーム」とは

 野球界では「選手は3年続けて結果を残したら本物」と言われる。

 最初の1年はフロックもある。2年目には少しの幸運に恵まれて、実力以上の力を出せるかもしれない。それでもそんなフロックや幸運も3年は続きはしない。だから3年間、継続して結果を残せば、それを本当の実力と思い、自分の力を信じても良い。

 この言葉はある意味、チームにも言えるのかもしれない。

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 例えば、今年の巨人である。菅野智之がメジャーリーグに移籍し、戸郷翔征がスランプで勝てなかった。そして岡本和真がケガで長期離脱して連覇はならなかった。本当のチーム力が充実していない。だからそういうアクシデントを乗り越えて、勝ち続けることはできないのだ。

 連覇は難しい。ましてや3年続けて勝ち続けるとなると至難の業である。2000年以降のセ、パ両リーグで、3連覇したチームは3つしかない。'16年から'18年の広島。'21年から'23年のオリックス。そして'07年から'09年、'12年から'14年と2度、達成しているのが巨人だった。'07年から'14年の8年間で6度のリーグ優勝というのは、チームとしての成熟、本当の強さがなければできないことだった。

「当然ですがチームというのは、ドラフトと外国人選手も含めた補強という2つの柱からできています。ただ、ドラフトには即戦力として指名する選手と、時間をかけて二軍から鍛えて育て上げていく選手の2つの道がある。補強と合わせてこの3方向から入ってきた選手が、三位一体となったチームが出来上がったとき、本当に強いチームが作れるということです」

 こう語るのはその8年間の巨人を指揮して、編成面でも重要な決定権を持っていた原辰徳である。

 '05年オフに3年ぶり2度目の監督に復帰した原だが、復帰1年目の'06年は主力選手の相次ぐ故障離脱をきっかけに、チームは夏前に急降下。2年連続でBクラスの4位という結果に終わった。

「主力が全滅みたいな状況でした。そこで僕が感じたのは上手い選手はいらない。それより強い選手でチームを作らなければならないということ。そこでオフにはガッツ(小笠原道大)や谷(佳知)を獲得して、そういう強い選手を軸に置いたチーム作りを始めました」

「坂本勇人を使えたのはチーム力があったから」

 '07年は補強した小笠原、谷が期待通りの働きを見せ、高橋由伸、阿部慎之助、二岡智宏らの生え抜き組もシーズンを通して活躍した。投手陣は生え抜きの内海哲也、高橋尚成、木佐貫洋が2桁勝利をマークし、守護神に抜擢した上原浩治が32セーブとフル回転でV1に貢献してくれた。

【次ページ】 「育成を待ってくれ」は巨人では通用しない

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