「やっと千賀と甲斐に追いつけた」育成初の首位打者・牧原大成に千賀滉大、甲斐拓也まで「ソフトバンク史上最高の2010年育成ドラフト」のナゾ

史上初の育成出身の首位打者に

　今季パ・リーグ連覇を果たしたホークスからプロ野球史上最多となる1チーム8人のタイトルホルダーが誕生した。注目したいのが首位打者の牧原大成、盗塁王の周東佑京、最高勝率の大関友久と育成ドラフトを経由した選手が3人もいたことだ。

　この中でプロとして最もキャリアが長いのが15年目の牧原である。過去に育成出身選手が打率や本塁打、打点といった打撃部門の主要タイトルに輝いた例は一度もなかった。寡黙で控えめな牧原は祝福の言葉を向けられると、喜びをかみしめるように潜めていた思いを小さな声で吐き出した。

「やっと千賀と拓也に追いつけました。やっぱり2人の方が目立っていたから。僕も仲間入りできた。これからは胸を張って、一緒にやってきた同期だと言えるかな」

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　2010年ドラフト――ホークスは支配下で5名、育成で6名の若者たちにチームの未来を託した。

　ドラフト会議が育成指名に入ると、ほとんどの球団は早々に“仕事”を終えていく。会場に空席のテーブルが目立ち始めた頃、下位3人の名前は読み上げられた。

〈育成4位。千賀滉大、投手、蒲郡高校〉
〈育成5位。牧原大成、内野手、城北高校〉
〈育成6位。甲斐拓也、捕手、楊志館高校〉

　3桁の背番号を与えられて、どうにかこうにかプロに引っかかった彼らだが、なかなかどうして球界でも顔と呼べる選手へと大化けした。千賀は今やメジャーを舞台に腕を振るようになり、牧原はついに史上初の育成出身の首位打者として名を刻んだ。甲斐もまた“甲斐キャノン”の代名詞とともに'18年日本シリーズでMVPに輝くなどスターダムにのし上がった。

　それからもアマチュア時代は無名だった選手がホークスに入ると何人も急成長し、彼らが原動力となりチームは優勝回数を増やしていった。そんな「育成のホークス」の源流にあるのが、やはり2010年ドラフトの成功例だろう。

2010年12月のソフトバンク育成選手の入団会見。後列左から甲斐、牧原、千賀。前列の伊藤大智郎、中原大樹、安田圭佑はいずれもすでに引退している　©NIKKAN SPORTS

三軍制のキーマンは東大卒の元ロッテ投手

　このドラフトと切り離せないキーワードが「三軍」である。現在のホークスは四軍まで設けられているが、三軍制時代は、育成ドラフトで獲得した選手は原則三軍に配属されて鍛えられた。ホークスは'11年シーズンから三軍制を導入。すなわち千賀と牧原と甲斐が「1期生」だったというわけだ。

　三軍を創る。

　当時、そのキーマンの1人となったのが、現在は桜美林大学の教授を務めるスポーツマネジメントの第一人者、小林至だ。東大卒の元ロッテ投手であり、'05年から'14年までの10年間はホークスのフロントマンだった。

「ホークスでは当初、球団経営に軸足を置いたビジネス色の濃い立場で仕事をしていましたが、'10年の1月にチームの編成・育成部長に就任したことで、チームづくりに深く携わるようになりました。そのタイミングで三軍制の話が持ち上がったのです」

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