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吉田正尚&山本由伸をドラフト指名で獲得…オリックスを3連覇に導いた敏腕編成部長が語る人材発掘法「いいと思う人を取るんじゃなく、マッチする人を…」
posted2025/11/10 17:00
オリックスの黄金期を支え、今はともにメジャーで活躍する吉田正尚(左)と山本由伸
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Hideki Sugiyama
発売中のNumber1130号に掲載[辣腕編成部長の改革]吉田正尚&山本由伸「3連覇の設計図を描いて」より内容を一部抜粋してお届けします。
12球団で最も長く優勝から遠ざかり、Bクラスが定位置となっていたオリックスが2021年、中嶋聡監督のもとで四半世紀ぶりのリーグ優勝を果たした。そして、そこからパ・リーグ3連覇。一体誰がそんな時代の到来を予測できただろうか。
その中心には、'14~'16年のドラフトで入団した選手が多く顔を揃えていた。当時、オリックスの編成を統括していたのが加藤康幸である。
加藤には野球経験がなかったが、ダイエー本社で陸上部、女子バレーボール部のスカウトやマネジメントを経験。その後、ダイエーホークスで7年間、王貞治監督付マネージャーを務め、'12、'13年には楽天で編成・育成統括本部長を任されていた。
楽天を辞めてオリックスに入団
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'13年に楽天が初のリーグ優勝を果たし、クライマックスシリーズを戦っていた頃、オリックスの湊通夫専務(現社長)が仙台まで加藤を訪ねてきた。
加藤には「助けてくれと頼まれたら行く」というポリシーがあるが、同時に「星野仙一を日本一にさせたい」という強い思いがあったため、湊にはこう答えた。
「ありがたい話ですが、僕は日本シリーズで勝つまでは辞められない。勝ったら辞めますが、負けたら楽天に残留します。だからまだ詳細を聞くわけにはいかないし、結論も出せません」
楽天は第7戦までもつれた日本シリーズで巨人を下して日本一となり、翌日、加藤は辞表を提出した。そして'14年1月、球団本部副本部長兼編成部長としてオリックスに入団した。
オリックスのドラフトはそれまで社会人の即戦力指名が中心だったが、'14年以降は将来性を見込んだ高校生や大学生のトップ選手を軸としたバランスのいいドラフトにシフトした。加藤に言わせれば、方針の転換というよりは、一からの構築だった。
「それまでは方針自体がなかったですから。過去10年間の選手のトラッキングレポートを出してくれと言っても、誰も持っていないし、チーム内でどういう選手を取るというセオリーもありませんでした」
まずフロント内で、スカウト部門と編成部門が別物であると定義するところから始めなければならなかった。
「日本ではスカウトと編成がごっちゃになりがちなんですが、スカウトは例えれば漁師みたいなもので、自分の漁場にどんな魚がいて、どんなタイミングで成長したのかというようなことを全部知っていなきゃいけない。編成はどちらかといえば魚屋で、どういう魚を仕入れ、どうやって売るかを考えるもの。そういう話から始めました」

