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野ボール横丁BACK NUMBER
巨人関係者「君をドラフト2位で指名する」発言も…まさかの“阪神入団”、北條史也のパニック「わけわからん…」「藤浪晋太郎と一緒か」ドラフトウラ話
posted2025/10/16 11:26
2012年ドラフト会議で、阪神からドラフト1位指名を受けた藤浪晋太郎(右)、2位指名の北條史也
text by

中村計Kei Nakamura
photograph by
Sankei Shimbun
その書籍のなかから“高卒エリート組の後悔”を紹介する。元阪神・北條史也が明かすドラフト会議当日のウラ側。【全2回の2回目/第1回も公開中】
◆◆◆
<北條史也にとって、大谷翔平の打撃はすごかったが、それでも間近で見続けてきた田村龍弘を超えるものではなかったという。
ところが、高校生活の最後の最後で田村を超える存在が現れた。それが3年夏、甲子園の決勝で再び対戦した藤浪晋太郎だった。>
あの田村を超えた…「高3藤浪の異変」
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一段と黒く焼けた藤浪は、春の藤浪とは別人だった。
遡ることおよそ4カ月半前、選抜大会の決勝で光星学院は大阪桐蔭と対戦し、3-7で敗れたものの、藤浪からは12安打を放った。三番・田村は3安打、四番・北條も藤浪から2本の二塁打をマークしている。1本はレフト線のライナー性の当たりで、もう1本は左中間を深々と破った。少なくとも完全に抑え込まれたという試合ではなかった。
その年の夏、大阪桐蔭は初戦で総合力の充実した木更津総合(千葉)とぶつかる。春の王者、大阪桐蔭といえども、そう簡単にはいかないだろうと見られていたが、先発した藤浪は14奪三振を奪い、8-2で完投勝利を挙げる。
その内容を宿舎のテレビで北條ら選手と一緒に観戦していた監督の仲井は、思わずこう漏らしてしまったという。
「こんなん打てるわけないな。絶対、無理やぞ」
仲井が自嘲気味に振り返る。
「はあ、俺、言っちゃってるな、とは思っていました。藤浪は選抜のときとは、ぜんぜん違いましたね。春はね、ガーッと力任せに投げている感じだった。でも、夏は最初はふわ~っとしていて、リリースのところだけバチーンと力を入れていた」
大阪桐蔭の監督である西谷浩一と藤浪が理想として追い求めてきた「体に腕が巻き付くような投げ方」がここにきてようやく完成したのだ。
仲井の弁明は続く。
「木更津総合は前評判も高かったんですけど、軽く勝ったように見えたんです。ああ、これはレベルが違い過ぎるな、って。うちはあの年、ラッキーで春夏ともに甲子園で準優勝しましたけど、春夏連続で甲子園に出るだけでも本当に大変なんですよ。夏の青森大会もギリギリだったんです。選抜のあと、バッティングがぜんぜん上がってこなくて。だから夏は、正直なところ、出られただけでもよかったなぐらいの感じだったんです。選手にも楽しんでやろう、ぐらいのことを言っていて。まさか決勝まで行けるなんて思ってなかったので」
しかも藤浪は、この夏、投げるたびに古い皮を捨て、生まれ変わっているかのように見えた。3試合目の先発となった準決勝の明徳義塾(高知)戦は4-0で甲子園初となる完封勝利を挙げる。許したヒットはわずか2本だった。
「僕は『藤浪世代』という方がしっくりきます」
明徳義塾の監督である馬淵史郎は試合前、準々決勝の天理戦で藤浪が好投したことを引き合いに出し、こう語っていたものだ。

