「あんた…長嶋（茂雄）さんの息子やで」ヤクルト元スカウト部長が明かした“1987年ドラフト狂騒曲”…長嶋一茂「1位指名」の舞台ウラ

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「おお、よう覚えてるよ……一茂なぁ」

　1987年のドラフト会議で「当たり」が引かれた瞬間、会場で頭を抱えたスカウト部長がいた。長嶋茂雄氏の息子・一茂氏を1位指名で引き当てたヤクルトの故・片岡宏雄スカウト部長（当時）である。

「外れろ～、外れろ～」と念じた1位指名

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「最初は一茂なんて、誰も言うてなかったんや」と片岡氏は当時を振り返る。実は当初、ヤクルトのスカウト陣の間では「投手を獲ろう」と決まっていた。

　その年のチーム防御率4.51はリーグワーストで、補強の第一候補は即戦力の投手だったのだ。

「野田は多良木高校（熊本）の頃から見とったからな。社会人2年目や」

　そう片岡氏が語ったように、ヤクルトの第一候補は九州産業交通の野田浩司投手。150キロ近い快速球と「お化けフォーク」の持ち主で、後に阪神→オリックスで活躍することになる快腕だった。

　しかし、夏頃から状況が変わり始める。助っ人外国人ボブ・ホーナーに帰国のウワサが流れ、突然のフロント陣の“一茂推し”がはじまったのだ。

「関根（潤三、当時の監督）さんから吹き込まれたのか、オーナーまで『神宮のスターはウチで預かって、ウチで育てて、親子二代で神宮のスターに』ってな」

　実は片岡氏自身、立教大時代には長嶋茂雄氏の1学年下のチームメイトだ。捕手と三塁手として、ともにチームを支えた仲だった。

「ドラフトが終わって、長嶋さんの家にどんな顔して指名のあいさつに行ったらええねん」と頭を抱えたという。

「『外れろ～、外れろ～』って念じながら見とったで。テーブルでな、会場の……。1位当てて会場で頭抱えたの、オレだけやろな、ドラフト史上で。ああ……外れたら、野田やった」

　結局、一茂氏はヤクルトに入団することになるのだが、実はそんな波乱のドラフト前には「ミスタープロ野球」長嶋茂雄本人から、片岡氏に1本の電話が入っていたのだという。

＜続く＞

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