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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「ボコボコに殴られた」プロ野球合宿所で事件…「まずい、もう一杯!」あの“青汁CM”八名信夫、じつは日本ハム系選手だった…まさかの俳優転身ウラ側
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岡野誠Makoto Okano
photograph bySankei Shimbun
posted2025/05/18 11:00
あの青汁のCMで知られる名優・八名信夫(左)。写真は2014年、当時ホークス監督の秋山幸二と
「安心して眠れるような所じゃなかったよ。新人の時、2年目の選手たちと大部屋で寝ていたの。深夜1時を回った頃かな、樽井(克友)さんが酔っ払いながら帰ってきた。そしたら、俺たちの布団を剥がして、1人ずつバンバンと殴っていくの。物音に気付いた米川(泰夫)さんが『何やってんだ!』と別の部屋から来て、樽井さんを引っ叩いた」
同じ明治大学出身の樽井を庇おうと、八名は浪華商業出身でエースの米川の前に立ち塞がった。
「バカだからさ、『先輩は酔っ払ってるんです!』って止めに行ったの。そしたら、『テメエが出る幕じゃねえだろうが!』って、米川さんにボコボコに殴られたよ(笑)。すげえチームだと思ったな。野球じゃねえよ、あれ」
試合中に骨折…まさかの俳優転向
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パ・リーグ8球団制の56年、東映は優勝した西鉄に39.5ゲーム差をつけられ、6位に終わる。
「そりゃ、勝てねえよ。だって、俺も他の選手も毎晩のように飲み明かしていたからな。試合中、岩本(義行)監督がピッチャーに『今日、アンダーシャツを何枚替えた?』って聞くんだよ。前日に酒を飲んだヤツは運動すると、異常に汗が出るからな。だから、あまり着替えてない投手がリリーフに上がる。すげえ野球だよ(笑)」
プロ3年目、運命が変わる。58年8月10日の近鉄戦(日生球場)、八名は3番手として5回裏からマウンドへ。モーションに入ると、ひび割れていたプレートにスパイクが引っ掛かってしまう。そのまま投球すると、体が後ろに引っ張られ、地面に腰を強打。そのまま病院に運ばれ、骨折が判明した。
「あの日は調子が良かった。そういう時って、運が悪いんだね。2度も手術したな」
そのオフ、球団事務所に呼ばれ、「来年からは本社で働いてくれ」と告げられる。実働3年、15試合0勝1敗。八名のプロ野球人生は静かに幕を閉じた。新たなサラリーマン生活に思いを馳せながら、東映の人事課に行くと、まさかの通告を受ける。
課長:八名くん、君は撮影所契約だから。
八名:え? 俳優なんかやったことないですよ。
課長:いやいや、みんな最初はそうだから。
仕方なく大泉撮影所に赴くと、数人の男が鏡の前で黒タイツ姿で踊っていた。


