プロ野球PRESSBACK NUMBER
「朝までドンチャン騒ぎ…自分を責めたね」張本勲の後悔“じつは清原和博18歳よりスゴかった”1年目「なぜあれほど打てたのか?」張本を知る男の証言
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byKazuhito Yamada
posted2025/05/11 11:02
「打者で高卒1年目の新人王」清原和博の前に張本勲が達成していた
10月2日の西鉄戦(平和台)では0対0の延長14回、3年連続30勝を目指す稲尾和久から決勝ホーマーを放つ。東映は8連勝でシーズンを終え、球団初のAクラスに入った。躍進の原動力は、チーム一の本塁打、打点を稼いだ高卒ルーキーだった。
張本は記者投票で141票中111票を集め、新人王に選ばれる。10月24日、大阪球場での南海対巨人の日本シリーズ第1戦前に表彰式が行われた。試合前、張本は浪商の先輩である巨人・坂崎一彦の元へ挨拶に出向き、〈シーズン中色々激励して下さった先輩のお陰です〉(※17)とお礼を述べた。
式典が終わると、張本はネット裏に呼んでいた母、兄に向かってトロフィーを掲げた。
ADVERTISEMENT
〈山本さん、坂崎さんという立派な先輩を持って幸せです。ことしは、一年坊主で、ただ夢中でやってきただけです。運よく新人王に選ばれてこんな嬉しいことはありません。来シーズン以降も、立派な先輩を目標に大いに頑張るつもりです〉(※18)
張本のち清原…高卒1年目の新人王
高卒1年目の新人王獲得に「当時はレベルが低かったから」という意見が出るかもしれない。しかし、同じ高卒ルーキーの王貞治は打率.161、7本塁打、25打点、板東英二は4勝4敗、防御率3.15だった。
パ・リーグの新人王は、大昭和製紙から阪急に入団した安藤治久(8勝10敗、防御率3.23)と張本が争った。セ・リーグの新人王は村山実(関西大学→阪神)と桑田武(中央大→大洋)が競り合い、ホームラン王に輝いた桑田が受賞した。彼らは大学や社会人の出身で、張本が唯一の10代だった。この年以降、野手で高卒1年目の新人王は86年の清原和博(西武)まで誕生していない。
張本は打率.275、13本塁打、57打点だった。一見、低い数字に思えるが、59年は「投高打低」の時代であり、パ・リーグの3割打者は6人、20本以上は4人、60打点以上は8人に留まっている。
清原は打率.304、31本塁打、78打点だった。86年は「打高投低」であり、パ・リーグの3割打者は11人、20本以上は15人、60打点以上は16人もいた。
チーム事情もあるが、初の4番は張本が6月23日、清原は10月7日と3カ月半も違う。張本は以降、1試合を除いて全て4番に座った。成績では清原が上だが、張本は有力打者の少ない東映で厳しいマークに遭いながら、高卒1年目でチームを背負ったのだ。
張本の後悔「自分を責めたね」
一生に一度の勲章を手にしながら、張本は悔恨の念を残していた。

