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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「ストライクがとれるのがアマのコントロール…じゃあ、プロはなんじゃ?」元阪神のレジェンドが90歳で没…“精密機械”小山正明が語った「極意」
posted2025/05/03 11:06
阪神やロッテなどで活躍した300勝投手の小山正明。その正確なコントロールは「投げる精密機械」と評された
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
阪神など3球団に所属し、歴代3位の通算320勝を挙げた「投げる精密機械」こと小山正明さんが4月に90歳で亡くなった。投手コーチとしても複数球団で後進の指導に尽力したレジェンドが語った「コントロールの金言」とは?《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
「だから、技術のないやつが体の近くに投げたら、いかんのよ!」
それまで、笑顔を交えた穏やかな口ぶりで話を進めていた小山正明コーチが、一転、怒りをこめた口調になったから、囲んでいた記者たちも一瞬すくんだようになってしまった。
あれは、私が今の仕事を始めたばかりの、ほんとにまだ駆け出しの頃だったから、もう30年も前になろうか。
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ある日のヤクルト戦前のダグアウトで、当時の阪神タイガースの小山投手コーチが、記者たちに囲まれて歓談していた。
世間話から始まって、やはり話題は次第に「野球寄り」になっていき、途中からは、小山コーチ長年のプロ野球生活に根ざした勉強になる野球論になって、みんなが聞き入っていたものだ。
その小山正明氏が、4月18日、心不全で亡くなられた。
90歳というから、あの時は60ちょっとぐらいだったのか……グラウンドコートを羽織った白髪、長身、ツヤのある低音で、渋い横顔が歌手の春日八郎さんのように見えていた。
300勝越え…球史に残る大エースが90歳で没
勝ち星歴代3位(320勝)、投球回数3位(4899イニング)、完封試合数も3位(74)。あらためて、実績を調べてみると、球史に冠たる大投手だったことがわかるが、もっと驚くのが、「針の穴を通すほどのコントロール」と謳われて歴代2位の無四球試合(73)を記録しながら、奪三振数も歴代3位(3159)だったことだ。
つまり、無類の制球力を誇る本格派投手だったのだ。

