NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「アレがオレの最高の一発よ」岡田彰布が明かした阪神“伝説の3連発”「必ず変化球が来るとわかったわ…ホンマに気持ちのええホームラン」
posted2025/05/15 17:02
1985年の阪神対巨人戦で、阪神クリーンナップによる「伝説のバックスクリーン3連発」の3本目を放った岡田彰布
text by

内匠宏幸Hiroyuki Takumi
photograph by
SANKEI SHIMBUN
発売中のNumber1118・1119号に掲載の《[独白打撃論]岡田彰布「アレがオレの最高の一発よ」》より内容を一部抜粋してお届けします。
岡田が語った「プロ人生最高のバッティング」
16年間の現役を終えた直後、岡田彰布に聞いたことがあった。
――これまでのプロ野球人生で最高のバッティングは?
すると岡田はしばらく時間をかけ、ニヤリと笑った。
ADVERTISEMENT
「いろいろあったけど、やっぱりアレやろな」
阪神タイガースの伝説の日。ちょうど40年前の1985年4月17日に奇跡のような場面が生まれた。あの「3連発」は日本一の象徴として、阪神ファンは今でも忘れずにいる。
その日の巨人戦は7回表を終えて1-3と、阪神は2点を追って「ラッキー7」に入った。走者一、二塁のチャンスを迎え、打席に3番ランディ・バース。マウンドの槙原寛己が投じた速球を捉え、打球はセンターのバックスクリーンに飛び込む逆転3ランになった。続いたのが4番掛布雅之で、彼も槙原のストレートをバックスクリーンの左に打ち込んだ。
興奮の甲子園……だが、物語はそれで終わりではなかった。
その時、ネクストバッターズサークルにいた岡田は考えていた。
「バースの打ったボールはあとで聞いたらシュートやった。カケさんはストレート。オレには必ず変化球が来るとわかったわ。スライダーを狙うってことよ」
岡田はもともと読みで打つタイプではなく、打席の中の感覚で勝負してきた。ただ、あの打席だけは確信があった。2球目、そのスライダーが甘く入ってきたのだ。
読みと感覚がハマった打球は、バックスクリーンへ一直線に伸びていった。中堅を守っていたウォーレン・クロマティが背中を向け、まったく動けなかったほどのホームランだった。
「ホンマに気持ちのええホームランやったし、手に残る感触は忘れない。アレがオレの最高の一発よ」
岡田は伝説を作り出した放物線を思い出し、手のひらをさすった。
「投手ではなくバッターで進んでいけ」
岡田の野球人生をたどる上で、「阪神タイガース」というワードは避けて通れない。父親の勇郎は阪神のタニマチ的な存在で、選手の面倒をみていた。自宅にも選手が訪れ、岡田少年は可愛がってもらっていた。
そこに現れたのが吉田義男と三遊間コンビを組んでいた三宅秀史だった。守備は長嶋茂雄より上手いと評された三宅は、岡田少年の手を見てこう助言した。

