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巨人ドラ1・浅野翔吾が史上2人目の満塁弾!“2年目の飛躍”が坂本勇人にそっくり…阿部慎之助監督も「スターになってほしい」と期待大なワケ
posted2024/08/26 11:32
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
SANKEI SHIMBUN
記者生活の中で深く記憶に刻まれた本塁打が何本かある。
2008年4月6日の阪神戦でプロ2年目の坂本勇人内野手が放った満塁アーチも、その中の1本となるものだった。
この年の坂本は開幕のヤクルト戦に「8番・セカンド」で先発出場。この試合で二岡智宏内野手(現ヘッドコーチ)がケガをしたことで、2戦目からはショートに入り、その後長く続いた“ショート・坂本勇人”のスタートとなっていく。
そして迎えた開幕9試合目。チームは開幕のヤクルト戦で3連敗。中日にも1勝2敗と負け越し、本拠地・東京ドームに戻って阪神を迎えた3連戦もいきなり連敗しての3戦目だ。その5回。アレックス・ラミレス外野手、阿部慎之助捕手(現監督)の適時打が飛び出し、なお満塁のチャンスで打席に入ったのが8番に入っていた坂本だった。
阪神・阿部健太投手の低めのストレートにヘッドを利かせて軽く振り抜く。打球はぐんぐん伸びて左中間席へと飛び込んでいった。この劇的一打は坂本のプロ1号だった。
ここから坂本はバットとグラブで不動の地位を築き、押しも押されもしない球界のスター選手へと育っていく。そのスタートとなった一撃だったのである。
「坂本はこれから5年、10年とチームを支える選手になっていく。だから我慢しても使い続けようと思う」
開幕前に坂本を先発起用することを決めた当時の原辰徳監督はこう語っていた。そこで「彼のどこを買いますか?」と問うと、こんな答えが返ってきた。
「身体にバネがあるし、内角の捌きは天才的なものを持っている。でも何より目つきがいい。特に逆境に立った時のカッと見開いた負けず嫌いな眼光の鋭さ。勝負師の顔をしている」
浅野翔吾と坂本勇人は、飛躍の過程がそっくり?
そして坂本に向けられた原監督の言葉と同じ評価を、8月21日の東京ドームで聞いたのである。
「勝負勘というか、そういうのを一番、僕は買っているんです。やっぱり打席に入った表情だったり、勝負する顔というか、そういうのが素晴らしいなと思っています」
声の主は巨人・阿部監督だった。
この日の広島戦で同点のタイムリー二塁打を放った浅野翔吾外野手に向けた言葉である。
高卒2年目のドラフト1位指名の野手。内野手と外野手という違いはあるが、浅野と坂本は1軍の舞台に飛び出してくる過程がそっくりである。