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「アジア杯の話、聞かせてくれないか?」板倉滉27歳にドイツで本音直撃…長年追う記者はなぜ「ビリビリ破れた練習着」に驚いたか
posted2024/03/07 11:01
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
Taisei Iwamoto
連日のように日照りが続いたカタールとは対照的に、ここドイツは打って変わって曇り空が続く。アジアカップの惨敗から1カ月、ボルシアMGの練習場はこの日もあいにくの雨模様だった。
トレーニング場には、笑顔の板倉滉がいた。チームメイトや最近トップ昇格を果たした若手の福田師王に声をかけるなど、周囲への応対を見れば、すぐにクラブの中心選手だとわかった。
アジアカップの話を聞かせてくれないか――。
筆者の意を汲んだ板倉は、嫌な顔ひとつせず「いいですよ」と即答してくれた。すぐに「思い出させないでくださいよ」と茶化したが、腹の底でどれほどの悔しさを抱いていたかは計り知れない。
「森保さんに申し訳ない」
“最強の日本代表”としてアジア王者奪還を誓った森保ジャパンは、期待を裏切る形であっけなく大会を去った。初戦から不安定な戦いを露呈し、全5試合で失点を喫した。「良い守備から良い攻撃を」というコンセプトは、戦略的に臨んできたアジアの各国相手に機能することはなく、最後はイランに力負けした。
「森保さん(監督)には申し訳なかったなと。オレを代えた方がよかったみたいな報道が出ていますけど、信用して使ってもらっている立場の自分としては、結果を出せずにただ申し訳ないという気持ちしかないです」
大会後、日本代表に厳しい視線が向けられた。同時に、メディアを通して選手たちからもさまざまな意見が飛び交った。
「もっとベンチから提示してほしい」
「決まりごとがあったほうがいいのではないか」
これまでもピッチ内での約束事の少なさや守備組織の構築不足は指摘されていたが、ここまで外部を巻き込んだ議論が生まれているのは珍しい。それだけ内容を突き詰める必要が求められている。
「選手たちも、覚悟をもって発言したと思う。ただ、個人としては、森保さんは普段からオープンな人で選手の意見を取り入れてくれている。そこまで共有できてなかった僕らも悪いんじゃないのかとも思う」
板倉は、そう言うと「すいません」と話を遮った。
今はチームや仲間のことよりも、自分にフォーカスしたい、と。そう言ってきたのだ。