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プロ野球PRESSBACK NUMBER
甲子園に響いた衝撃音「あ、藤浪のストレートが…」“絶好調の谷内亮太”を襲った悲劇「ヤクルト、日本ハム…仲間に愛された男の11年間」
posted2024/01/29 11:00
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
KYODO
️ 2023年9月27日。エスコンフィールドのど真ん中に立ち、ロックスターのように眩いスポットライトを浴びながら谷内はふと、我にかえったという。
「僕、2000本(安打)でも打っていたっけ? レギュラーでバリバリ活躍していたかなぁ、って。なんか不思議な感覚に陥りました(笑)」
現役生活は11年間。日本ハムでの5年間は出場302試合で、その多くが途中出場というユーティリティープレーヤーだった。その輝きは“一番星”というよりは“いぶし銀”の存在感。そんな谷内が、自らの名前を冠しての「引退試合」で送りだされ、2万9000人超の前でひとりマイクを握り惜別のスピーチをし、花束を贈られ、胴上げで6度、宙に舞った。
「現役をやっている時は、自分が引退試合をして辞められる存在だという感覚はなかった。だから、待てよ、自分はそんな選手なのか、っていう複雑な気持ちももちろんありました。でもやっぱりやっていただけるっていうところに、最後はちょっと甘えようと思って。恥ずかしかったですけどね(笑)」
DMで相談「代打かDHでお願いします」
当日は「7番・三塁」で先発。新庄剛志監督の計らいで一塁、二塁、遊撃と守備位置を変え、最後は右翼まで守った。実はこのアイディア、新庄監督との間でこんなやり取りがあったのだという。
「引退試合をすると決まってから、監督に連絡を取りました。電話番号を知らなかったのでインスタのDMです。僕は『代打とかDHでお願いします』と伝えました。若手がエスコンで1球でも多く守る経験をしてほしいと思ったんです。でも、監督からすぐに『ファンが見たいのは守っているところじゃない?』とメッセージが来て。さらに後日、『こういう案があるからどう?』と。でもライトの守備は当日いきなり言われたんです」