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今永昇太はDeNAに何を残したのか? 山崎康晃、三嶋一輝、戸柱恭孝の証言で振り返る「“投げる哲学者”がいた8年間」…牧秀悟は「想いを継承したい」
posted2024/01/15 11:01
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
USA TODAY Sports/Reuter/AFLO
「Hey Chicago!」
今永昇太らしいシカゴ・カブスの入団会見だった。ファンに馴染みの深い応援歌『Go Cubs Go』の歌詞に合わせ、英語で自己紹介をして喝采を浴びると、着用する背番号18について、同番号を背負い2016年ワールドシリーズ優勝の立役者となったベン・ゾブリストの名を挙げ「自分も同じような活躍がしたい」と語った。
ユーモアとリスペクトを忘れない今永に、多くのカブスファンはきっと心を掴まれただろう。
2021年シーズン終了後に明かされた、MLBへの興味
機知に富んだ会見から滲み出た新天地への覚悟。思い返せば今永が初めてMLBについて言及したのは、2021年シーズンが終わり、契約更改をした時のことだった。三原一晃球団代表(当時)からアメリカへの興味を訊かれ、今永はこの席で「あります」と、素直に答えている。
この話が表に出たときから、いずれ今永はMLBへ旅立つものだと思っていたが、ついにその日は訪れた。
この2年間というもの、今永はMLB挑戦について語ることはほぼなかった。思いを内に秘め、チームのためにマウンドで腕を振ってきた。
ただ、今永自身のFA権取得のタイミングを考えれば、今オフにポスティングで海を渡るのは既定路線だったと言ってもいいだろう。またワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での好投によって、アメリカでの市場価値が上がったこともあり、お膳立ては揃っていた。
WBCの後に今永が語っていた「不安と希望」
昨シーズン、今永の取材をしてきてMLBへの思いを唯一発露したのは、WBC後に話を訊いた時のことだ。決勝戦で先発マウンドに立った今永は、トレイ・ターナーにソロアーチを浴びたが、打者10人に対し2回4安打1失点で投球を終えている。このピッチングを振り返り、今永は次のように言ったのだ。