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「残り2%が圧倒的な差に」“大穴”FC町田ゼルビアはなぜJ1昇格できたのか? 藤田晋社長が語る“名将”黒田剛の手腕「いずれは世界に…」
posted2023/12/29 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
Number1086号(2023年12月7日発売)に掲載された[藤田晋社長が明かす]FC町田ゼルビア「圧勝劇を生んだ2%の差」を特別に無料公開します。※時系列などは全て初出時のまま
「大穴」がJ2独走で逃げ切り
J2優勝シャーレを自分で手にした写真を、X(旧ツイッター)の背景画面に貼りつけている。
「こんなこと初めてしましたよ。見返してみても、これまでのなかで自分が一番うれしそうにしているんです。ああ、こんな表情になるんだなって」
クールで知られる著名な経営者は写真のなかで顔をくしゃくしゃにして笑っていた。
株式会社サイバーエージェントのトップである藤田晋が社長兼CEOを務めるFC町田ゼルビアはクラブ史上初めてJ1昇格とJ2優勝を決めた。昨シーズンは15位に終わったチーム。競馬になぞらえて言えば、「大穴」が独走で逃げ切ったわけだ。
「J2は本当に紙一重。予算に差があってもJ1クラブの若手がレンタルでやってきて、それもモチベーション高くガッツあるプレーをしてきてチームに差がつかない。“魔境”を抜け出せたことが何よりですね」
2018年に経営権を取得してから5シーズン目。苦しんできた分だけ喜びの味もひとしおであった。
快進撃の起点は、1年前にさかのぼる。藤田自ら陣頭指揮をとるべく、ゼルビアの社長に12月1日付で就任した。
「(サイバーエージェントが)毎年、広告費という名の実質的な赤字補填をしてきて、“何とかしろ”と僕が言うのは他人任せだし、それは無責任。経営陣を一新することも考えましたが、いや、自分でやる、と。そもそもこの規模の支出をしているなら、これくらいは稼がなきゃいけない、これくらいのパフォーマンスは出さなきゃいけないというスケール感、スピード感が経営の現場、サッカーの現場に伝わっていなかったので、'22年シーズンが終わった後にパッと決断したんです」
青森山田の黒田監督が候補に挙がってきたので…
潤沢な資金を活かして大物外国人選手を獲得するのではないかとも囁かれたが、土台をつくって勝つチームにすることが先決だった。青森山田高を全国有数のサッカー強豪校に育てた黒田剛監督に目を留めた。