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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「プロは細かな部分、見てるんですよ!」熱弁にトライアウトL参加者の表情が…オリ阪神OB平野恵一44歳の野球論が深イイ
posted2023/12/26 17:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
11月下旬から1カ月にわたって、沖縄県で開催されたジャパンウィンターリーグ。高校・大学卒、社会人、独立リーグ、さらには海外9カ国の選手たちが集結し、10~30万円余の参加費を支払い、連日にわたって試合をこなした。
プロ、独立リーグなど日本初の長期トライアウトリーグであるジャパンウィンターリーグは、「座学」も充実している。元選手やトレーナー、アナリストなどが「野球」にまつわる奥深い話をするのだ。
元オリックス、阪神で活躍した平野恵一氏は現在、台湾プロ野球(CPBL)中信兄弟のファーム発展ディレクターとして選手を評価する立場にある。平野氏は、30数人の選手を前に、ときに鋭く、ときには温かい言葉で講話をした。幸運にも筆者はその現場に立ち会うことができた。そこで平野氏が話した〈選手のどこを評価するか〉の一部をご紹介する。
ファンに愛される選手であってほしい
〈現在の立場で、選手の何を見ているのか?〉
「実は私たちが見ているのは、『結果』ではありません。たとえばウォームアップ。グラウンドに出てからどういう風に試合に向けて調整しているのか、試合中は何を意識してやっているのか、そんな部分を見ています。例えば内野手なら、練習でのファーストまでの送球と精度。そしてベンチに入ってくるまでのランニングの仕方、三振した後の表情、さらにはちゃんとベースカバーやカバーリングしているか、ネクストバッターズサークルでの投手へのタイミングの合わせ方、スイングは自分本位か、それとも投手に合わせているかなど、色々な部分を見ているんです」
〈スーパースターだけで野球をしていない〉
「忘れてはいけないのは、僕らはプロ野球選手なので、お客様を喜ばせなければいけないエンターテイナーということです。ものすごく悪い奴が野球がうまくても、お客さんが見に来ないでしょう。やっぱり人格者であったりファンに愛される、いろんな人が皆さんのプレーを見て『よし、明日から仕事頑張ろう』と思えるような選手であってほしいです。
野球はエースと4番打者だけじゃない。地味な選手も頑張っているな、あの選手は陰の立役者的な存在だ、という選手は〈俺と一緒だな〉とファンに共感してもらえる。僕が言いたいのは、野球というスポーツは注目される選手、スーパースターだけで競技をしていないということです」