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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「一軍ではもう難しいのかな」DeNA三上朋也33歳が限界を悟った一球…その秋、通算114ホールドの生え抜き右腕は横浜を去った
posted2023/12/28 11:02
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Shiro Miyake
野球ってプロだけじゃない
季節外れの強い南風。舞い上がる砂、荒れて白い波頭が立つ太平洋の海を見ながら、三上朋也は語った。
「例えば、肘や肩、腰が壊れて、納得のいかないパフォーマンスになってしまうのならば野球を辞めると思うんです。けど、まだできるって思っているし、自分で終わらせてしまうのは勿体ない。好きで始めた野球なのに、誰かに言われて辞めてしまうのは、どうなのかなって」
吹き荒れる風と強い日差しに目を細め、冷静な口調で三上は続ける。
「野球ってプロ(NPB)だけじゃないんですよ。僕は大学や社会人、また海外でもプレーしているし、野球っていろんな形があるわけです。だから投げられるうちは、プロじゃなくてもプレーしたいなって」
純粋な野球への想い。白球を追いはじめた幼き日から、なにも気持ちは変わらない。
お金が稼げなくなったら終わるとか…
「もちろんね、葛藤や天秤にかけるものはあるんです。家庭の事情や経済的なことなど、人それぞれだとは思うんですけど、うちは幸い妻や家族の理解があって『納得いくまでやりなさい!』と背中を押してくれるので、今はちょっとだけ甘えさせてもらっています。ありがたいっすよね」
そう言うと三上は少しだけ苦笑した。確かに長い人生を考えれば、プレーヤーでいられるのは、ほんのわずかな期間だ。
「だから“尊い”ですよね、この時間は。何にも代えがたいモノ。野球は楽しいスポーツだし、好きで始めて、お金が稼げなくなったら終わるとか、戦力外になったから現役引退するとか、そういう考えにはならなかった。ただ、それだけなんですよ」
1年目から抑えを任される
大海原を見つめ話す三上からは、野球ができることへの感謝や充足感が漂っていた。湧き上がる情熱は、誰にも止められない。