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2019年世界陸上を優勝後、代表を連続辞退…競歩・鈴木雄介35歳が語る“空白の3年間”「オーバートレーニング症候群の診断」「…引きこもり状態でした」
posted2023/08/25 11:07
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
2019年9月、中東ドーハで行われた世界陸上の男子50km競歩で優勝し、東京五輪の代表に内定した鈴木雄介(富士通)。しかし、その後、東京五輪そして世界陸上を辞退するなど大舞台からは姿を消した。一体、「空白の3年間」で彼の身に何が起きていたのか(Number Web ノンフィクション 全2回の第2回/初回#1から読む)。
【前編までのあらすじ】ドーハでのレース後に原因不明の不調に苦しめられる中、鈴木のもとに「東京五輪延期」の報せが舞い込む――。
【前編までのあらすじ】ドーハでのレース後に原因不明の不調に苦しめられる中、鈴木のもとに「東京五輪延期」の報せが舞い込む――。
延期で「もっと良くなるはず」
それを聞いたとき、鈴木はこんな感想を抱いたという。
「そこに照準を合わせていた他の選手には申し訳ないですけど、安堵しました。これで練習を軽くしたり、ある程度休んでも間に合うかもしれないと。正直、3月の時点ではギリギリ試合に出られるかなという感覚でしたけど、もっと良くなるはずだとこの時は信じてましたね。それで思い切って、練習を休むことにしたんです」
4月に鈴木は久しぶりのオフを取った。それでもアスリートとしての使命感からか、ジョギングだけは欠かせなかった。オフといいつつも、本当の意味で身体が休まることはなかったのかもしれない。以降も調子は上向かないまま。国立スポーツ科学センターできちんと診察を受け、病状が判明したのは8月に入ってからのことだった。
オーバートレーニング症候群
「これは言い訳にもなるんですけど、病院に行くことすら億劫になるというか。すべてのことが面倒くさくて、病院にもなかなか行けなかったんです。最終的にはさすがにヘンだと思って診察を受けたんですけど、そこで初めて『オーバートレーニング症候群』と告げられました。病状がわかって安堵した一方で、すごいショックでもありましたね」
鈴木自身も原因を探る過程で、ひょっとしたらこれかもしれないという予感を抱いていた。だが、それを認めるには勇気がいったという。アスリートならではの、繊細な理由からだった。