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30歳の左腕がマウンドから秘密のメッセージを送った相手は誰だった? 国指定の難病を克服した中日・福敬登が手話に託した復活の言葉
posted2023/05/18 11:04
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
SANKEI SHIMBUN
わずかな瞬間の左手の動きに、深い思いとメッセージが込められたと気づけた人間は、ほとんどいなかったかもしれない。しかし、中日の福敬登は、確かにこう伝えた。
「帰ってきたよ」
手話だった。5月5日の巨人戦(バンテリンドーム)が、福の復帰登板となった。1点ビハインドの8回にマウンドに上がり、投球練習を終えたところでバックスクリーン方向を向いて素早く左手を動かした。
難病からの復帰マウンドで…
1イニングを無失点で切り抜け、ベンチに戻ってハイタッチ。そこから打線が奮起した。巨人のリリーフ投手を攻略し、一挙6得点。復帰戦の福に白星がついた。
文字通りの「帰ってきたよ」。福は昨シーズン終盤に左足付け根付近がしびれ、力が入らなくなった。複数の病院を回って精密検査を重ねたところ国指定の難病「黄色靱帯骨化症」だと判明した。10月25日に手術を受け、リハビリをスタート。そこから半年あまりでの一軍復帰となったが、黄色靱帯が骨化するこの病気は手術によって根本的に治るとは限らない。