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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
WBCで驚異の打率5割超! 井端弘和が明かす日本を救った一打「いきなり鳥谷が走って、アレって」「WBCに臨む選手に伝えるとしたら…」
posted2023/03/08 17:47
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
野球の世界一を決める大会として2006年から始まったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した日本代表は、過去にも数々の名場面を生んできた。
もちろん代表格は09年の第2回大会の決勝戦でイチロー外野手が放った決勝タイムリー安打の場面だろう。世界一連覇を決めたイチローの姿は、日本の野球ファンの記憶に永遠に刻まれる名場面だった。またそれ以外にも第1回大会準決勝の韓国戦で、0対0の同点の7回に、福留孝介外野手が放った均衡を破る2ランホーマーなど痺れる場面は数々ある。
その中で3連覇がかかりながら、惜しくも準決勝で敗れた13年の第3回大会は、歓喜と屈辱と両方の記憶を残した大会でもあった。
2次ラウンドの台湾戦。負ければ敗退という9回2死の土壇場から同点タイムリーを放ったのが当時中日に所属し、後には東京五輪日本代表でコーチも務めた井端弘和さんだ。井端さんのこの劇的な一打で日本は決勝ラウンドに進んだが、準決勝のプエルトリコ戦では重盗失敗でチャンスを潰して敗退した。この屈辱の場面でも、二塁走者として絡んでいたのが井端さんだったのである。
「初球にいきなり鳥谷が走って、アレって…」
まずは台湾戦のタイムリーから。
「(台湾戦のタイムリーの場面は)鮮明に覚えていますね。初球にいきなり一塁走者の鳥谷(敬内野手)が走って、アレってびっくりした。そこからです」
この試合は日本が左腕・能見篤史投手、台湾がニューヨーク・ヤンキースで活躍した右腕の王建民の先発。ハードシンカーを武器にするメジャーリーガーに日本打線は手こずった。その間に台湾は3回に先制すると、5回にも追加点を奪い2点差に。8回表に日本は阿部慎之助捕手と坂本勇人内野手のタイムリーで追いついたが、直後の8回裏に再び台湾に1点を許して突き放されてしまう。
そして迎えた9回表。1死から9番の鳥谷が四球で出塁し、長野久義外野手が中飛に倒れた2死から打席に入ったのが井端さんだった。
その初球。いきなり一塁走者の鳥谷が走ったのである。
「盗塁のサインは出ていなかったんですよ」
鳥谷が独断で判断して勝負をかけたのだ。