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「僕が一番不満だったのは…」野村克也の“盟友”、江本孟紀が明かす“月見草”の真実「話がよくできすぎている」「実際は月見草ではなく…」
posted2023/02/11 11:02
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by
Sankei Shimbun
江本孟紀著『野村克也解体新書 完全版 ノムさんは本当にスゴイのか?』を抜粋した内容を特別に公開します。《全3回の3回目/#1、#2から読む》
野村克也が自分の言葉でしゃべった名言
野村監督といえば、その“名言”“語録”が有名である。
しかし僕には逆に自分の言葉がない人という印象が強い。野村監督ほどの人が、なんで自分の言葉でしゃべらないのかなというのが僕の素朴な疑問だ。
野村監督はなにかを語るときに、必ず孔子の論語や孫子、偉人の言葉などを引用する。“勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし”なんて、たしかに名言だと思うが、これは江戸時代の大名で剣の達人だった松浦清の『剣談』からの流用だ。
実際にそういう名言を書きためた小さめのノートを持っていて、「今日はこの故事を使って話そう」とか考えて家を出る。情報分析を信条にしているだけあって、準備をするのは好きなのだ。
偉人の言葉を借りてきて話をする心理には、あの人の学歴コンプレックスがある。
僕に言ってくれた「ワシのミットだけを見つめて投げろ」なんていうのは、自身の中から生まれた名言だと思うが、世間に対する言葉となると、なにを気後れするのか、急に自信がなくなって偉人の言葉に頼ってしまう。そこが僕は一番不満だった。
ぼやき会見についてぼやいた「いろいろ考えているんや」
やっと自分の言葉でしゃべり出したのは楽天から。
“マー君(田中将大)、神の子、不思議な子”は、2007年のソフトバンク戦における試合後のコメントだから、楽天2年目。この頃からちょっと変わってきた。
試合後にコメントを求められるようになって、だけど毎日のことだから、そんなに毎度取り立てて言うこともない。でもカメラはまわっている。なにか言わなくちゃならないから、グチや本音やおやじギャグをぼそぼそ言ったら、これが意外とウケてしまった。で、本人も味をしめて得意の準備。試合後のコメントを朝から考えて球場に来るようになったのだ。