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「こんなに気の優しい子がプロ野球でやれるのか」あの宗佑磨が日本一オリックスにいる“奇跡”…小学生とはっちゃける“オフの姿”にグッときた話
posted2023/01/07 11:05
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Yuki Kashimoto
我が目を疑ってしまった。
「あの、宗君が、こんなことをするなんて!」と。
昨年12月、宗佑磨の母校・横浜隼人でOB会主催の野球教室が行われた。宗を含むプロ野球選手、そして社会人野球の経験者の計9人が一堂に会し小学生と野球を楽しんだのだが、今までの開催では先輩OBの隣で控えめにしていた宗が、今回はマイクを持って「みんな、がんばるぞー!」と開会宣言。そして積極的に子どもたちに話しかけ、笑わせ、身振り手振りを使って場を盛り上げていた。その姿に目を疑ったのだ。正直、この姿は10年前には想像できなかった。
「そういうタイプじゃなかった……よね?」
初めて横浜隼人で会った宗はクリッとした目でこちらを見るも、すぐに目をそらしていなくなってしまう、内向的で大人しい選手だった。取材で何かを聞いても一言、二言だけ話して、すぐに後ろに下がってしまうタイプ。その証拠に、取材ノートに宗のコメントはほとんど残っていない。それでも、高校3年間の公式戦三振数はたったの8個。県内無敵だった桐光学園・松井裕樹(楽天)のスライダーをヒットにするなど野球センスはずば抜けていた。中身に幼さが見え隠れしていたぶん、そのギャップに苦しんでいたと思う。高校野球を取材する者として、選手の成長を目の当たりにしたときほどうれしいものはない。
「以前はそういうタイプじゃなかった……よね?」。閉会後、本人に聞いてみると、「うん、ホントそう(笑)。でも今日はマックス出しましたね。てか、出ちゃいました!」と、はにかみながら笑った。その表情は今までみたことがない「大人な宗君」。プロの貫禄が漂っていた。
いちばん沸いたのはホームラン競争の時間だ。
後輩が上げたトスを思い切りフルスイング! シーズン中は決して自分のスタイルを変えない宗が右足を高く上げて迷いなくバットを振った。2本がホームランに。「ヤッター!」と右手を上げ、子どもたちと喜んだ。