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「村上宗隆選手の本塁打で度肝を抜かれたのは…」「一見矛盾してる動きが」元首位打者・鉄平も驚く“打率+威圧感アップ”のポイント
posted2022/09/15 11:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
プロ野球新記録の5打席連続ホームランに、史上最年少でのシーズン50号到達。通算150本塁打も最年少記録を更新した。そして、13日の巨人戦で2本のアーチをかけ、日本人最多記録となる王貞治氏の55本に並んだ。プロ5年目のヤクルト・村上宗隆内野手が、歴代ホームランバッターの記録を次々に塗り替えている。
そのホームランと打点でタイトル争いを独走し、打率もシーズン終盤に急上昇させてトップに立つ。2004年のダイエー・松中信彦氏以来、18年ぶりの三冠王は現実味を帯びている。
2年目は3.2打席に1回だった三振も今や確実性アップ
身長188センチ、体重97キロ。村上は巨漢と表現するにふさわしい、典型的なホームランバッターの体型をしている。その長打力はプロ入り前から「別格」と評された。実際、プロ2年目の2019年に36本のホームランを放っている。ただ、ホームランバッターのイメージに違わず、確実性は高くなかった。2019年は打率.231、184三振。規定打席に達した打者の中で打率は最下位、三振数は最も多かった。実に、3.2打席に1回は三振だった計算になる。
ところが、翌2020年に打率.307、ホームラン28本とイメージを払しょくする。高いレベルで長打力と確実性を兼ね備えるバッターへと進化した。
ホームランを積み重ねれば、打点は自然と増える。プロ野球の歴史を見ても、二冠王に輝いたバッターは多い。しかし、内野安打を稼げる足の速い打者が有利とされる首位打者のタイトルまで獲得するのは、高いハードルとなっている。
鉄平が注目する「体の軸」「打球を捉えるポイント」
なぜ、村上は長距離バッターでありながら、好打率を残せるのか。現役時代にシーズン打率3割を3度クリアし、2009年には首位打者に輝いた元楽天・鉄平氏が、まず指摘したのは「体の軸」だった。
「村上選手は、打球を遠くに飛ばすスイングの速さと強さがあります。そして、体の軸がぶれません。強くスイングしようとすると力を出すために体を振ってしまいますが、村上選手は軸が変わらず、体が前に出たり、後ろに下がったりしません」
体を大きく振って反動を利用すれば、打球の飛距離は伸ばせる。一方、バットの芯で捉える確率は下がり、空振りや凡打が増える。村上は体を目いっぱい使わなくてもスタンドに運ぶだけの体の強さやスイングの強さがあるため、確実性の高い打ち方で同時に飛距離も出せるのだ。
現役引退後は楽天で打撃コーチを務め、今年は解説者をしている鉄平氏が、昨年から進化した点に挙げるのが「打球を捉えるポイント」である。