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「慶応は…本当に嫌いですね」東大野球部のスカウトが語る“スポーツ推薦も内部進学もない”東大の努力「夏休みは高校球児に勉強合宿で口説く」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/08/22 17:00

「慶応は…本当に嫌いですね」東大野球部のスカウトが語る“スポーツ推薦も内部進学もない”東大の努力「夏休みは高校球児に勉強合宿で口説く」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

2017年、日本ハムからドラフト指名の挨拶後、安田講堂前で写真を撮る宮台康平投手。じつは東大野球部は高校1年当時から宮台に注目していた。そんな東大のスカウト活動とは?

「東大野球部のOB会の中で、野球部員をもっと補強しようという声が出たのが、2006年のことでした。当時、部員数が1学年10人前後だったこともあり、部員数を増やし、同時に野球が上手い子をもっと入学させようということで、スカウト事務局が作られました。といっても、大学公式のものではなくOB会のボランティア活動です。東大のスカウト=入試対策でもあるので、学習塾の経営をしている私が適任だろうと、OB会長のご指名を受けたわけです」

 浜田は1983年に土佐高校から東大に進み、4年時には野球部主将を務めた。大学院卒業後は、新日鉄に入社。1994年に独立し、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」Ai西武学院を創業。2013~2019年の東大野球部監督時代は、通算9勝をあげている。

「2007年から、スカウトのために各地の高校野球部を回るようになりました。訪問先は、基本的には、本気で甲子園を目指している地方の進学校ですね。1~2カ月に1校のペースで回り、およそ10年程度で47都道府県をコンプリートしました。最初はツテなんてありませんから、飛び込みの電話から始まります。『東京大学野球部のスカウトの浜田と申しますが、文武両道の高校とお聞きしているので、一度練習を見学させてもらえませんか』と直接学校の事務室に連絡するんです。スカウト活動の予算はほぼないので、『訪問した際、文武両道について講演する。その代わりに、旅費を出してほしい』という交渉もしましたよ」

 高校訪問で細やかな東大受験対策を指導しているわけではない。浜田にとってのスカウト活動を端的に言うと、「東大受験のモチベーションを高める全国規模の活動」なのだとか。

「東大受験なんて考えてもいない子に、東大に行きたいと思ってもらうことが主眼ですので、黙っていても東大に多数入学してくる灘や開成などの超進学校は対象外です。秋田、静岡、東筑、彦根東、米子東など甲子園出場経験のある地方の進学校を訪問して、選手と話すケースが多いです。そのような学校の野球部員はみな文武両道を目指していますから、『東大野球部で文武両道のテッペンを目指しませんか』と声をかける。やはり、テッペンという言葉は男の子の心理をくすぐりますからね。さらには、『慶應などで控えになるより東大でレギュラーになって、初優勝の立役者にならないか』などと口説きます」

「現役東大生が家庭教師に」夏休み2週間の合宿勉強会

 こうした地道な訪問活動は、高校野球界で話題を呼んだ。やがて2013年に監督に就任する頃には、高校野球関係者の人脈もすっかり広がり、各地の高校から有望選手の情報が集まるようになっていた。

【次ページ】 「現役東大生が家庭教師に」夏休み2週間の合宿勉強会

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