「これからは本人が楽しめることをやってほしい」

　それを可能にした要因の一つは、やはり那須川天心の存在だったのだろうと卜部は言う。那須川と闘うまでは負けられない。それがモチベーションになったし、武尊の能力を引き上げてくれた。

　那須川戦を終えた武尊は、記者会見で無期限の休養を発表した。ケガ、それにパニック障害とうつ病を克服し、心身ともに復活してまた闘いたいと言う。K-1のベルトも返上した。新しい目標もできたそうだ。卜部にインタビューしたのは会見前だったが、やはり気持ちを切り替えてほしいと語っていた。

「天心くんとの試合を終えて、モチベーションを維持するのは難しいでしょう。それに、その前からずっと気を張ってきたので。僕たちの世代はK-1に憧れて、でもK-1がなくなって、Krushで頑張って、新生K-1ができてっていう歴史の中でやってきた。ずっと“このリングを俺たちが盛り上げる”っていう気持ちでした。

　それでここまでこれた。特に武尊はK-1をずっと引っ張ってきましたよね。だからもう、立場とか気にしないでやってほしいです。これまで背負いすぎるくらい背負ってきたので。これからはのびのび、なんでもいいから本人が楽しめることをやってほしいと思います」

試合後に武尊から届いたLINEメッセージ

　卜部自身も、気持ちを新たにする部分があった。『THE MATCH』の終盤3試合は山崎秀晃、野杁正明、武尊とKREST勢が他団体との対抗戦で3連敗。キャリアを重ねた3人は最高の舞台に「間に合った」が、結果を出すことはできなかった。

「大事なのは次の世代ですよね。今後も対抗戦があったほうが選手のモチベーションになると思いますし、その時はK-1勢がもっと勝てるようにしたい。自分もエグいくらい強い選手を育てて、K-1に送り込まなきゃって思ってます」

　武尊からは、試合が終わって卜部兄弟とのグループLINEにお礼の連絡があったそうだ。

「今回もセコンドありがとうございました。2人についてもらって、本当に心強かったです。今度、久しぶりに3人でご飯行きましょう」

　そんな文面だった。今なら何も気にせず、「吐くほど焼肉食べた」昔のようにバカ話ができるだろう。K-1を背負ってきたエースは、かわいい後輩に戻れるだろう。

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