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いてまえ打線の7番・川口憲史、選手時代は“お酒を飲んでた”時間に起床→パン作りの今…01年“近鉄最後の優勝”は「今でもふと思い出す」
posted2022/01/25 11:02
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
お店の扉を開けると、香ばしくてしあわせな香りがフワっと鼻の奥に飛び込んでくる。そして優しい笑顔で出迎えてくれるのが、懐かしの近鉄バファローズ、最後のV戦士だった川口憲史さん(45)だ。
球界再編後は分配ドラフトにて楽天イーグルスへ。そして2010年シーズン限りで引退。その後は生まれ故郷の福岡に戻って、現在はパン屋を営んでいる。
福岡市の西端。西九州道の真下を通る今宿バイパスから一本脇道に入ったところに「パンandベーグル hands hands(ハンズハンズ)」はある。店舗を構えたのが12年4月だから、まもなく丸10年を迎える。いつの頃からか福岡市内で評判の名店の一つに数えられるようになった。
「ちょうど近鉄でプレーした期間と同じになりましたね」
現役時代の一番の思い出と語るのはやはり、今も野球ファンの脳裏にこびりつく01年のパ・リーグ優勝決定試合だ。
“いてまえ打線”の7番。「モットーは『倍返し』でした」
昨季のバファローズのように、あの年も前年最下位だった猛牛軍団が快進撃を見せた。そのチームを力強くけん引したのが「いてまえ打線」だった。
3番を打ったタフィ・ローズが打率.327、55本塁打、131打点。当時の日本タイ記録のシーズン本塁打をマークした。4番打者の中村紀洋が打率.320、46本塁打、132打点で打点王を獲得。そして、5番・礒部公一(.320、17本、95打点)、6番・吉岡雄二(.265、26本、85打点)に次ぐ7番打者が川口さんだった。16年間の現役生活で自己最高となる.316、21本、72打点の成績を挙げた。
「チーム防御率はほぼ5点台(実際には4.98)でリーグ最下位。シーズン後半は投手陣も頑張ってくれて接戦をモノにした試合も多かったけど、僕らのモットーは『倍返し』でしたからね。テレビドラマで数年前に流行りましたけど、僕らはそれよりもずっと前に言ってましたよ(笑)。1点取られても2点取ればエエやろって打者は全員思っていました。その中であの年は個人プレーだけに走らずに、次につなごうという意識が強かったように感じます」
開幕戦からそうだった。開幕投手の門倉健がいきなり初回5失点も、ひっくり返して10-9で勝利を収めた。前半戦ラストだった7月17日のロッテ戦でも4-9で迎えた9回表に一挙8点を奪い大逆転勝利した。
「優勝する時ってそんなもんなんでしょうけど、やってる僕らも信じられない試合がいくつもあったんですよね」